ラブストーリー

「東京ラブストーリー」第1話 ネタバレ感想 | 1991年・冬ドラマ

東京ラブストーリー

昨今、漫画原作の映像化は当たり前になっている。
いや、むしろ原作ありきでないと企画が進まない現状がある。
その際、話題になるのが、どこまで原作に忠実にできるのか否か。

確実な原作ファンを視聴者にしたい制作サイドは、大胆な改変に躊躇しがち。
しかし現場ではこんなの映像でできない、非現実的、やってもつまらないというのが大半で、撮影が近づくにつれてどんどん脚本を変えられてしまうことが多い。
そのせいで原作ファンや原作を読んだ視聴者からお怒りを受けることはよくある話だ。

しかしこの東京ラブストーリーは、脚本家の坂元裕二氏がセリフやエピソードを大胆に脚色し、原作ファンも納得させる仕上がりになっている。

ただ断っておくが、脚本家が自由気ままに原作を改変することはできない。
この決断ができるのは、プロデューサーだ。(原作者の了解を得ている場合)
脚本家に改変する、しないの決定権はない。

つまり原作通りでお願いします、と言われればその通り書くのがプロの脚本家で、改変して変な方向にいき、脚本家が「変ですよ」と注意しても、「それでいいんです」と決定権者に言われればその通り書くのもまたプロの脚本家。
何が言いたいかというと、原作が面白いのに、映像で失敗する場合、脚本家が無能だったとは言い切れず(無能も確かにいる…)、その原作に愛がない、ただ利用するだけの決定権者がいたという場合がかなり大きい。

この東京ラブストーリーの成功は、原作に愛を持ったプロデューサー、脚本家、演出部、そしてキャストがよかったおかげだろう。
純愛ドラマの名作と語り継がれる「東京ラブストーリー」第1話の感想と脚本を分析していきます。

「東京ラブストーリー」は、FODでご覧いただけます。



登場人物

赤名 リカ――鈴木保奈美
スポーツ用品メーカー「ハートスポーツ」の事業部の社員。
ロサンゼルス帰りの帰国子女。さっぱりとした性格、はっきりとした物言いで仕事もできる。だが社内で、和賀部長との間に怪しい噂があり…

永尾 完治――織田裕二
「ハートスポーツ」の営業部の社員。
就職を機に、愛媛から上京する。さとみと三上とは高校の同級生。
高校時代からさとみに片思いをし、東京で5年ぶりに再会を果たすのだが…

関口 さとみ――有森也実
幼稚園の先生。
完治の高校の同級生。東京で高校の同窓会があり5年ぶりに再会。
三上に片思いをしている…

三上 健一――江口洋介
文教大学医学部生。
完治の高校の同級生。女癖が悪く、同じ研究生の尚子にちょっかいを出す一方、再会したさとみにも…

長崎 尚子――千堂あきほ
文教大学医学部生で、資産家の娘。
真面目で優等生だが少し影がある。不真面目な三上を毛嫌いするが…

和賀 夏樹――西岡徳馬
「ハートスポーツ」の営業部の部長。
仕事ができ、頼れる完治とリカの上司。

渡辺 昇――中山秀征
「ハートスポーツ」の営業部の社員。
完治の同僚。噂好きで、リカと和賀の不倫を噂して広めている…

第1話あらすじ(ネタバレあり)

羽田空港の到着ロビーに、永尾完治はいた。
ハートスポーツの営業部へ就職することになり、愛媛から上京したのだ。
完治が会社から迎えに来ているという女性を探していると、突然、
「カンチ! ナガオカンチ!」
と声をかけられた。
彼女は事業部の赤名リカといった。さっそく商品の積み込みの仕事を任される。

リカは完治が元気ないことに気づく。
「8月31日の小学生みたい、なんか東京にヤなことでもあるの?」
完治は東京に不安を感じていた。「……何があるかわからないし」
「そんなの、何があるかわからないから、元気でるんじゃない」
ネガティブな完治に対し、ポジティブなリカだった。

その頃、三上は女とベッドの中にいた。
完治の電話に出て、明日の愛媛東高校の同窓会の出欠を問われる。
その電話から完治が気になっているのは、同級生の関口さとみが来るかどうかのようだ。
「おまえらこっちで会ったりしてるんだろ?」と完治。
「あいつは友達じゃない」と三上。
「じゃあ何だよ」
「女」と答え、電話を切られた。

関口さとみは東京で幼稚園の先生をしている。
三上は大人なんだけど弟みたいで、完治は子供なんだけどお兄さんみたいと同僚に話す。
「どっちが好きだったの?」と同僚。
「二人が仲良く話してるのを見てるのが好きだった」とはぐらかす、さとみ。
彼らと会うのは五年ぶりらしい。

完治はリカに、高校の同窓会があることを話した。
さとみに片思いをし、ずっと言えずじまいでいることをぽろりともらす。
「暗い青春引きずっちゃって……」
「青春の一ページと再会するんだ? 上手くいくといいね、その娘と」とリカは励ました。

そして愛媛東高校の同窓会が開かれた。
遅れてさとみがやってきた。
笑顔になる完治。横に座るよう促すが、女友達の隣に腰を下ろすさとみ。
さとみは三上を待っている様子……

そろそろお開きの時間に三上が現れた。
嬉しそうに笑うさとみ。
するとその背後からリカもやってきた。
実は街角で二人はぶつかり、偶然知り合いに。
リカは完治を見つけて、嬉しそうに駆け寄った。

完治、リカ、三上、さとみでバーへ行った。
高校時代の話をして盛り上がる。
だが三上が上の空だ。そしてさとみが話しかけるのを阻止してグラスを持って立ち去る。
三上はカウンターで一人佇む女の横に座った。
彼女は、長崎尚子。同じ大学で医学部の研究生だった。

その二人の様子を眺め、落ち込むさとみ。
リカが「妬いてるみたい」とズバッと言ってしまう。
さとみはややムキになって否定。完治は何も気づいていない様子。彼は鈍感らしい。
三上が戻ってきても、さとみは怒っていた。
その怒りの理由を三上が勘違いして帰ってしまう。その後を完治は追いかけた。

二人きりになったリカが、三上のことが嫌いなのかとさとみに聞いた。
「嫌いっていうんじゃないけど、三上くんといるとイライラするの」
そんな関係でもうらやましいと思うリカ。彼女は帰国子女で、同窓生は日本にいない。

三上が帰ったことで落ち込むさとみ。
その彼女を必死に元気づける完治。
その様子を見て、「小さな親切、大きな下心」と完治をからかうリカ。
「俺になにか恨みでもあるんですか」とリカに抗議。でも彼女は無視。
すると、電話を掛ける真似をして、「もしもし」
リカも受話器を取る真似をして、「もしもし」
「俺になにか恨みでも」
「ガッチャン」と切るリカ。
二人はかなり気が合うようだ。
リカは、店のコースターに書いた電話番号を完治に渡して去った。

リカは家に着くやいなや、完治の家に電話をした。
「カンチの青春の一ページ目って、さとみちゃんのことなんでしょ?」
動揺する完治。
リカは恋のキューピットになってあげるとおせっかい。
完治が慌てて断ろうとすると、リカの電話が突然切れた。
かけ直すため、先ほどもらったコースターの番号にかける完治。
ところがかかったのは、さとみだった。
実はあの番号は、リカが完治のためにさとみから聞き出したものだった。

完治はハートスポーツの同僚と早くも打ち解ける。
そしてリカが和賀部長とできているという噂を聞く。和賀は既婚者だ。
そんな話を聞いた後、リカに呼び出された完治。
リカの電話が切れた後、さとみに電話がかかり、結果今夜会うことになったと伝えた。
デートするんだと盛り上がるリカ。はにかむ完治。

だがその頃、幼稚園に三上が現れてさとみを誘い出す。
完治と約束があるとさとみは断るが三上は強引で、結局三人で会うことに……

完治との待ち合わせ場所まで、三上の車で向かう。
五年前からお互い東京にいるが初めてのことでさとみは戸惑っていた。
「どうしたの? 急に誘ったりして……」
「忘れてたからな」と三上。
ショックを受けるさとみ。だが、
「忘れてたハズだったんだけどな」と言われドキッとした。

リカは会社で残業をしていた。そこへ緊急の連絡が……
今夜行われるキャンペーン商品が事故で届けられない。
倉庫にサンプルがあり、それで間に合わせたいが人員がいない。
そのことを和賀に相談すると、営業部に任せろと彼はいった。見惚れているリカ……

完治らは落ち合い、高校時代のように三人で楽しんでいた。
石を水面に向かって投げて競い出すと、三上が、
「俺が勝ったら、関口は俺のものな?」と軽くいう。
驚く完治とさとみ。そして三上は投げ、勝ってしまう。
呆然とする完治。そのとき会社からポケベルが鳴った。
リカが完治に応援を頼んだ。
完治は仕事へ行くことになり、三上とさとみはバーへ向かった……

イベントが始まっているが、商品はまだ届いていなかった。
完治は商品を積んで車を飛ばすが袋小路に入り、車は停車。万事休すだ。
リカに携帯で電話して道案内してもらい、商品発表直前になんとか間に合う。
安堵から笑顔で見合うリカと完治。
「もう頭ん中、ダイハードとインディジョーンズいっぺんにやってるみたいだったよ」

バーにいる三上とさとみは話が弾まない。
三上は、そんなに自分と二人きりになるのが嫌なのかと聞く。
答えないさとみ。
三上は帰ろうとする。さとみは引き止めた。
「嫌いになんか……。嫌いになれたら、どんなに楽だったろ……」
「え……」

完治とリカもバーへ向かっていた。
そしてバーを出る三上とさとみを見つける。彼らは気づいていない。
二人は見つめ合い、なにやら話し込んでいる。
と、三上がさとみを抱きしめ、キスをした。
完治とリカ「!!」
だがさとみは三上の腕から逃げた。
「私のことなんか好きじゃないクセに。私は三上くんには似合わないんだよ」
と立ち去った。

完治が悲しそうにしている。
するとリカが近くにあったケースを蹴飛ばした。大きな音を立てて積まれたケースが崩れる。
「逃げろ!」とリカ。
訳がわからないまま後を追う完治。
「振り向いちゃダメ」と、リカは完治の手をつかんだ。

リカの他愛もない話を聞き、落ち着いていく完治。
二人は「また明日」と別れの挨拶を交わす。
だが別れがたい様子で、なかなか背を向けられない。
「なんか、これじゃいつまで経っても帰れないね。せーので一緒に後ろ向こ」
せーの、で背を向ける完治。
だが振り返ると、リカがこちらを見て微笑んでいた。
「ずっちーな」と完治。
「カンチ」
「何?」
カンチ、と呼び続けるリカ。
そして「カンチ!」と駆け寄って抱きつく。
「好き」
突然の告白に動揺する完治。
そして頬にキスをしてリカは笑顔で去っていった。

感想とシナリオ分析

ラブストーリーにおいて、いい人は振られる、という脚本テクニックがよく使われる。
共感をさせるのにとても効果を発揮するからだ。

その際、重要なのは、視聴者にその人物がいかに誠実で”いい人”かを知らせても、
その”いい人”が恋い焦がれる人にはその良さを知らせてはいけないということ。

そうすれば見ている側は、二人のすれ違いを歯がゆく感じ、二人が誤解するさまを見て、ドキドキハラハラできる。

そして”いい人”が振られると、一気に視聴者はその”いい人”を味方したくなる。つまり共感をする。
なぜこんな”いい人”を振ってまで、そっちを選んでしまうのか、と。

今回の場合、完治はさとみに恋い焦がれているが、完治の本当の良さをさとみは知らない。
だが視聴者とリカは、完治の誠実さ、優しさ、さとみを思う気持ちを知ることができる。
だから完治が、三上とさとみのキスを目撃し落ち込む場面を見て、共感を覚えた。

さらに視聴者はリカの良さも知っている。
天真爛漫の彼女は色気はないが、完治が好きという思いはひしひしと伝わってくる。
ところが今度は完治にそれが伝わってない。
彼が鈍感なのもあるが、脚本的に彼にあえて知らせていない。

視聴者はリカに共感し、つい応援してしまう。
完治がさとみを思う気持ちもわかるが、視聴者は完治とリカの二人が結ばれることを望みながら視聴することになるのだ。
2話はどんな恋の進展が見られるのか、気になります。

素晴らしかったセリフ

坂元裕二さんらしく、随所に小気味いいセリフが散りばめられ、選ぶのがとても難しい。
紡ぎ出したセリフのおかげで、1シーン1シーンがとても美しく感じる。

その中でも1話のラストシーンはやはりいい。
リカが完治に、シンプルに「好き」という場面。彼女は思わず言ってしまい、悔しいと漏らす。それを見て思い出した。
あのセリフは、完治に対してだけではなく、リカ自身にもいえることだったのだと。

完治たちの同窓会にリカが乱入し、完治の片思いの相手がさとみとわかった。
恋に臆病で優柔不断な完治のために恋のキューピットになると宣言するリカ。
そのときのセリフだ。

「好きって一言が早口言葉五百個言うよりも難しい時ってあるもんね」