サスペンス

「水曜日の情事」第1話 ネタバレ感想 | 2001年・秋ドラマ

水曜日の情事

芸能人の不倫は許されないが、ドラマの不倫は許されるようだ。
不倫をテーマにしたドラマは昔から視聴率がよく、話題性がある。

今回ご紹介したい「水曜日の情事」も不倫ドラマである。
不倫ドラマの中でもトップクラスの傑作だと筆者は思う。

まずタイトルにある「水曜日」は何を意味するのか?
男が最も不倫をする可能性の高い曜日が、水曜日だからだそうだ。
男の心理的に、月曜、火曜の週初めから後ろめたいことはできない。週終わりの木曜、金曜は物理的に会社の接待が入りやすい。土日は家族サービスにあてなくてはならない。
そうなると、愛人に残された曜日は、水曜となる。
だから、水曜日の情事なのだと。

ある本によると、男の不倫は女に比べて、意思を固めないままに不倫に踏み込んでしまい、踏み込んでから悩み、戸惑うようだ。
このドラマの主人公もそうである。
簡単に抜けられると思っていたのに、どんどん深みにハマっていく。

大事にしたい妻と恋してしまった愛人に揺れる男の物語。
「水曜日の情事」第1話の感想と脚本を分析していきます。

「水曜日の情事」は、FODでご覧いただけます。



登場人物

佐倉 詠一郎(35)――本木雅弘
大手出版社・文洋書店の文芸編集者。
エネルギッシュな仕事ぶりから「行動隊長」とあだ名を持つ敏腕編集者である。
結婚3年目で自他共に認める愛妻家だったが、妻の親友の操の出会いで変わってしまう…

佐倉 あい (33)――天海祐希
詠一郎の妻。小さなリフォーム会社を経営。
両親や弟の明洋と疎遠なため、詠一郎と温かな「家庭」を築いていくことが彼女の夢。
ところが学生時代の親友の操の登場でその夢に暗雲が…

天地 操  (33)――石田ひかり
あいの小・中・高と学生時代の親友。
10歳年上の財務官僚である夫が過労死してしまう。その葬式で15年ぶりにあいと再会。詠一郎とも出会い、彼に近づいていく…

前園 耕作 (29)――原田泰造(ネプチューン)
ハードボイルド新人賞に輝いた、若手有望株のアクション小説家。
詠一郎に誘われた文壇バー『ソル』のホステスの由香子に一目惚れ。詠一郎から恋愛小説を書くよう頼まれるが…

岡島 明洋 (31)――谷原章介
あいの弟。CM音楽などを作曲している若手ミュージシャン。
あいがコツコツ貯蓄していた会社設立資金を持ち逃げして疎遠に…

浜崎 由香子(22)――伊東美咲
文壇バー『ソル』のホステス。
営業として新人客の耕作に積極的なモーションをかける…

小暮 志麻子(33)――木村多江
文壇バー『ソル』のママ。
常連の詠一郎をよく知っている…

沖野 晶午 (32)――北村一輝
インテリアデザイナー。
公私共に、あいの良きアドバイザーであり、親友でもある。恋愛対象は男…

都山 ハコ (20)――金子さやか
明洋の恋人。
いつも派手なファッションに身を包んでいる。

第1話あらすじ(ネタバレあり)

大手出版社・文洋書店の文芸編集者の佐倉詠一郎が新進気鋭のアクション作家・前園耕作に尋ねた。
「……先生はさ、この世で一番恐ろしいことって何だと思う?」
アクション作家らしい子供のような耕作の回答に鼻で笑う詠一郎。
彼は、自身に起きている身の毛もよだつ話を耕作にする。

生涯妻を愛すると誓った男が、妻の親友と恋に落ちた。
そしてある日、事件が起きた。
愛人がおもむろに男の前に文化包丁を放ち、
「わたしをこれ以上抱きたかったら、それで奥さんを殺してきて。できるでしょ、わたしのことを愛しているなら」と……
話を聞いていた耕作はぶるった。
「先生、これが世にも恐ろしい男と女の物語ってやつだよ」
詠一郎は思う。「一ヶ月前に、時間が戻せたらなあ」と――

一ヶ月前の詠一郎は、仕事のできる敏腕編集者で、家庭に何の問題もない、自他共に認める愛妻家だった。
他社で活躍する人気作家の耕作を男女の機微が書ける一流の作家に鍛えると豪語して、偶然を装い、耕作と知り合った。
逃げ回る耕作を捕まえ、「先生、あんたは才能の無駄遣いしてる」と挑発する詠一郎。
「なら、どういう小説を書けっていうんですか」と耕作。
恋愛小説だといわれ、躊躇する。耕作は恋愛ベタだ……
「恋愛の蓄積のない先生に、『ホントにあった男と女の怖い話』を俺がどんどん話して差し上げますから。俺たち二人で日本の文壇に新しい風を吹き込んでやりましょう!」
耕作はまんまと詠一郎の強引な誘いに乗る羽目に……

詠一郎の妻、佐倉あいもやり手のキャリアウーマンだ。リフォーム会社を経営している。
家族と疎遠の彼女が選んだ仕事が、「家の再生」とはなんとも皮肉な話だと詠一郎は思っている。

あいは、インテリアデザイナーで公私共に良きアドバイザーの沖野晶午とランチへでかけた。
夫婦で仕事ばかりな現状に不安があると晶午に相談する。
とはいえ、詠一郎に浮気や不倫の心配はないと話す。
なぜなら一度若い女を送り込んで試したことがあるのだという。
恐ろしい妻だ、と晶午。
「佐倉詠一郎って生涯妻を愛する男なの」とのろけた。
そこへ旧友から連絡が入った。かつての親友、天地操のことだった……

仕事終わり、詠一郎とあいはちゃんこ屋へ行った。
高校時代の友達(操)の旦那が過労死した。会うのは15年ぶりで、一人で行きたくないから告別式に付き合ってほしいと頼む。詠一郎は了解した。

翌日、葬儀に出る詠一郎とあい。雨が降る中、焼香の長い列に並ぶ。
後ろで操と故人の話が聞こえた。
結婚生活は2年で子供はいない。故人はカラオケが唯一の趣味の真面目な財務官僚だった。奥村チヨをよく歌っていたらしい。部下たちは発見した故人が自殺じゃないかと疑っていた。なぜなら書類に『楽になりたい』とあったからだった……

あいと操はアイコンタクトを交わす。
そして隣りにいるのが愛の夫なのだと気づく操。
雨が上がり、喪主が別れの挨拶する中、詠一郎と操の目が合った。
彼女は何かを歌っている。
『……あなたと逢ったその日から、恋の奴隷になりました。あなたの膝にからみつく、子犬のように』
「奥村チヨだ!」それに気づいているのは詠一郎だけだった。
ふっと微笑みかける操にぞっとする詠一郎。だが不思議な感動を覚えていた。
すると雨がまた降り出した……

文壇バー『ソル』にやってきた耕作に、詠一郎は葬儀で見た操の話をした。
こういう話を聞かせてあげるから、恋愛小説を書いてくれと耕作に頼む。
耕作は断るのだが、操の話には興味がそそられる様子……
詠一郎も操のことが頭から離れない。
その晩、あいにせがまれて子作りに励むのだが、そのさなかも彼の頭の中は喪服姿の操でいっぱいだった……

あいの提案で、親友の『慰める会』が開かれた。
佐倉家へ操と耕作がやってきた。
操は元の天地姓に戻り、心機一転、保険金と労災金でランプシェードの店を開くという。
あいが操の新居探しを手伝うことになった。
そんな様子を見て耕作は「女の友情もいいっスね」という。
だが、詠一郎はやや引っかかる。なぜ親友なのに15年も会っていなかったのか?
「女ってそういうところ、あるのよ」とあい。
「あるよね、女って」と操。
二人の微妙な『何か』を感じ取った詠一郎と耕作だった。

後日、操が詠一郎の会社に突然やってきた。
二人で会社近くの喫茶店へいく。
操の新居は佐倉家から川を挟んだ徒歩15分ほどの場所。橋を渡ったすぐ先の一軒家らしい。
話は弾んでいるようで弾んでいない。

詠一郎は操に確認したいことがあった。
葬式で奥村チヨを歌っていなかったか、と。
すると操が答える代わりに何かを話し始める。それは葬式で歌っていた歌詞だとわかった。
詠一郎はまた不思議な感動を覚えた。すると操が、
「今、あなた、わたしのこと透視してるでしょ」
意味がわからず、きょとんとする詠一郎。
「この女は痩せてるように見えるけど、実は着痩せするタイプで、裸にしたらけっこう凄いのかもしれない」
唖然とする詠一郎。操は続けた。
「あの葬式の時も、たまんなかったよなあ。この手で帯をするする解いていやりたかったよなあ。図星?」
詠一郎は笑って否定する。「何が言いたいの?」
「教えてあげる」
そう言ったが、操はしばらく黙りこくった。そして顔を上げ、切なげな涙目で詠一郎を見つめてきた。
「好き」
「え……」
「あなたのことが好きになっちゃった……どうしよう」
しかし今度は現実に引き戻されるように、親友の旦那だから「ダメダメ」と自分に言い聞かせた。だがまた切ない顔で、
「好きになっちゃいけない人、わたし、好きになっちゃった?」と尋ねた。
夢でも見ているかのような表情で詠一郎は言葉を失っていた……

感想とシナリオ分析

「愛の舞台に登って馬鹿らしい役割を演じるのはいつでも男である」
これは、島崎藤村の言葉だそうだ。

詠一郎が、葬式の最中に『恋の奴隷』を歌う操の話をしたとき、耕作はそれを聞いて嘘っぽいと言った。
嘘のような出会いをして、恋に落ちるなというのは無理なのかもしれない。
操と出会う直前まで愛妻家だった詠一郎の心は、その嘘みたいな出会い一瞬で乱された。
恋愛に疎い、アクション作家の耕作でさえ、その話を聞いて創作意欲がわくほど刺激的だった。

詠一郎は妻のあいに不満は何もなかった。
ところが平凡な日常に、ふいに飛び込んできた非日常が、平凡だった人を狂わせた。
よくある話ではある。魔が差す、ということだ。
しかしそれが愛の舞台だと、一瞬では済ませられない。必ず取り返しのつかないところまでいってしまう。
後から考えれば馬鹿らしいのだが、最中は狂おしいのである。

わかってはいるがやめられない泥沼に詠一郎の片足が突っ込んだところで終わった。
でもその気持ちは、男でも女でもわかるのではないだろうか。
共感せざるを得ないよう丁寧な人物作りがされており、脚本家の野沢尚氏らしい緻密な脚本になっている。

実際の不倫は、手軽な出会いで始まり、近場で行われるような安っぽいことなのかもしれない。
昨今の扱う不倫ドラマはそのたぐいだ。
しかし、これほど心を揺さぶる衝撃的な出会いをしてしまって、体が反応しないなんてことの方が無理があるだろう。
誰が詠一郎を責められるだろうか。

とはいえ、詠一郎がこれから味わう苦しみを思うと、視聴者としてはワクワクしてしまう。
冒頭のシーンは一ヶ月後のことだ。かなり泥沼になっている様子……
それにあいと操の関係も何かありそうだ……
2話が気になってしかたがない!

素晴らしかったセリフ

佐倉家で、操の慰める会が開かれた。
話は、世の中の既婚男性に対する苦情。
操「女房を何だと思ってんだ。『愛してる』なんて口が裂けても言わないしさ」
するとあいは、詠一郎は違う、彼は愛妻家だと話す。
あい「教えてあげて。『釣った魚に餌をやらない』のアンチテーゼ」
詠一郎は妻に促され、さらりと言ったセリフ。

「苦労して釣った魚は人に食わせない」

しかしそんな男でも、不倫の沼に落ちていく……