サスペンス

「水曜日の情事」最終話 ネタバレ感想 | 2001年・秋ドラマ

水曜日の情事

前回、詠一郎は再びあいに思いを伝えた。
初デートの場所で待っている、来なかったら諦めると伝えた。
そして、あいはやって来た。
二人は抱き合い、キスをした。

ところが操と耕作は二人を引き剥がそうと結託し、つけてきていた。
操は彼らの前に、笑顔で現れる。
驚く二人に、操は何を話すのか?
『愛のために戦う』と決めた詠一郎とあいはどうなったのか。
最終話の感想と脚本を分析していきます。

「水曜日の情事」は、FODでご覧いただけます。



登場人物

佐倉 詠一郎(35)――本木雅弘
大手出版社・文洋書店の文芸編集者。
エネルギッシュな仕事ぶりから「行動隊長」とあだ名を持つ敏腕編集者である。
自他共に認める愛妻家だったが、妻の親友の操と不倫し、それが発覚して離婚。だが1年後元妻にやり直そうと迫る…

佐倉 あい (33)――天海祐希
詠一郎の妻。小さなリフォーム会社を経営。
詠一郎と温かな「家庭」を築いていくことが彼女の夢だったが、夫と親友の不倫が許せず離婚。夫婦で築いた家をリフォームし心機一転した矢先、詠一郎からキスをされ、やり直そうと言われたが…

天地 操  (33)――石田ひかり
あいの小・中・高と学生時代の親友。
詠一郎と隠れて不倫していたがあいに気づかれ、二人は離婚。結果的に詠一郎が操の家に移り住むことになったのだが、一年を経て元夫婦はよりを戻そうとしていると疑う…

前園 耕作 (29)――原田泰造(ネプチューン)
ハードボイルド新人賞に輝いた、若手有望株のアクション小説家。
文壇バー『ソル』のホステスの由香子と付き合っている一方、詠一郎と離婚したあいに惹かれていて彼女との結婚を望む…

岡島 明洋 (31)――谷原章介
あいの弟。CM音楽などを作曲している若手ミュージシャン。
あいがコツコツ貯蓄していた会社設立資金を持ち逃げして疎遠に。だが詠一郎の仲立ちで仲直りする。恋人のハコと結婚し子供も生まれた…

浜崎 由香子(22)――伊東美咲
文壇バー『ソル』のホステス。
恋人の耕作が、詠一郎の元妻あいに惹かれていることに気づき、色々と引き止めようとするのだが失敗。失恋した…

小暮 志麻子(33)――木村多江
文壇バー『ソル』のママ。
常連の詠一郎をよく知っている…

沖野 晶午 (32)――北村一輝
インテリアデザイナー。
公私共に、あいの良きアドバイザーであり、親友でもある。恋愛対象は男…

都山 ハコ (20)――金子さやか
明洋の妻。
義姉のあいの家で子育て中…

最終話あらすじ(ネタバレあり)

詠一郎とあいが二人でキスしているところに、操が現れた。
あいを無視して、何事もなく詠一郎に話し続ける操。
「帰ろう。わたしたちのウチに。一年がかりで、作ったウチに」
詠一郎は諦めたように操の後を歩いた。

家に帰ると、食事を始める操。
詠一郎は粛然と箸を手にして食べ始める。
操は、詠一郎に「結婚式、挙げようか」と言い出す。
そして式には、あいや耕作を呼びたいという。
「わたしが頼めばきっと来てくれる。誰よりもあいにわたしたちの結婚を祝福してほしいの」
詠一郎は、呆気にとられる。
『女達が、また血を流し合う。止めることができるのは、俺しかいない。それが、二人の女を同時に愛した男の役目ではないのか』
『みんな誰かを、愛しすぎている』

後日、操が教会で式を挙げることを決めた。
操はあいの家に行き、あいや明洋とハコ夫婦らの出席を直談判した。
信じられない3人。それでも、
「来てくれるわよね?」と操。
「お義姉さんを悲しませた張本人二人を、どう祝えって言うのよ」とハコ。
「なら、ただ見届けてくれたら」
あいは微笑んだ。「喜んで、行かせてもらう」

あいはそれで踏ん切りがつくと考えたらしいが、晶午は大反対した。
「あいと操さんと詠一郎さん……三人にはもっと別な決着の付け方が必要なんだよ」
「だから二人の結婚式で決着をつける。私の手で」

文壇バー『ソル』で詠一郎はやけくそになりながら耕作や志麻子、由香子に結婚を報告する。
耕作は祝福した。由香子は怒りの表情。志麻子は呆れる。
そして結婚式にあいが来ることを知った耕作は激怒した。
「先生、頼むよ……見届けてくれよ、俺たちの結末をさ」
詠一郎の覚悟を話す。
「俺、操を幸せにするよ。それを神様の前で誓い、あいの前で誓えば、俺たち三人はやっと、結末を迎えられる……そう思わない?」
耕作は詠一郎の心に触れた。

詠一郎は泥酔して目を覚ますと、そこは志麻子のマンションだった。
高級マンションに驚く。志麻子は自分で手に入れたと話す。
「男、いないの?」
「失恋以来ね」と詠一郎をにらみ、「いい根性してるじゃない、私まで結婚式に呼ぶなんて」
「取り消す」
「行く。絶対に行く。佐倉ちゃんの結婚式で、みんなが人生のケジメをつけるってことかな……」

それから数日後、森の教会で結婚式が始まった。
続々と集まる関係者、耕作や志麻子、由香子、明洋とハコ夫婦らも参加する。
そしてあいが現れた。

あいは詠一郎のもとへやってきた。
「あなたにとっては結婚式、私にとっては離婚式」
そこへ花嫁の操がウェディングドレス姿でやってきた。
操は感謝し、もう一つお願いを頼む。
「わたしとヴァージンロード、一緒に歩いてくれないかな」

礼拝堂に、あいに付き添われた操が入ってくる。
皆が見守る中、詠一郎はあいから操を託される。
かつての夫と、親友の後ろ姿を見つめるあいの胸中は……

詠一郎と操が聖書にそれぞれ手を置き、誓いをしようとした瞬間、
「待ってください!」とあいは言った。
「!……どうしたの」と操。
「ええと、あの、二人が将来を誓う前に、まず私が誓わなきゃと思いまして……」
そして神に語りかけるように、あいは懺悔する。
「ねぇ詠一郎、操、私、やっと決心がついた。それ今から言うね」
と涙目になる。
「私、幸せになるね。恋人を見つけて、その人の子供を産んで……そういうフカフカしたあったかい人生、見つけるから。ごめん、操……やっぱり私、二人のこと最後まで祝福できそうにないや。ごめんね、詠一郎、幸せになってね」
と、踵を返して、あいは足早に去っていった。

式は続けられた。誓いを求められた操は――
「いえ、誓いません。誓いません、わたし」
「……」
「わたし……あんなふうにあなたを愛し続けるあいには、やっぱり勝てない。だけど、あなたをあいに返すなんてできない」
「……」
「わたしとあいは、せえので一緒にあなたから背を向けるの。わたしも幸せになりたい。あいが言うような、フカフカしたあったかい幸せを、わたしも見つけてみたい」
「……」
「あなたなしでそれを探したい。あいにできるなら、わたしにだってできるはず」
「やっぱり君たちは、最後は俺なんてどうでもよくて、女同士で決着をつけるんだな」と苦笑した。
「いつか同窓会しよう。わたしと詠一郎さんと、あいの三人で」
そして操はヴァージンロードを一人で去っていった。
一人残された詠一郎に作家の溝口が声をかける。
「時間は、恋愛を弱めてしまう。だがね、時間は、友情を強めるんだ」
詠一郎は列席者に一礼をした。

一人佇むあいがいた。ウェディングベルを聞こうとしていたが鳴らない。
そこへ耕作がやってきた。
「鳴りませんよ」
何があったのかを伝える。そして、プロポーズをした。
「僕と、日々、生きてみませんか」
「わからない。私ってほら、男を見る目ないから」

由香子は耕作の家の合鍵を置いた。
「あたしもやっと決心ついた。あなたと別れて生きていきます」
「ごめんな……辛い思い、させて」
「恋愛小説、期待してる。あたしのこと、一行でいいから、書いてね」
と、笑顔で去っていった。

それから三年後、前園耕作の恋愛小説がやっと完成した。
詠一郎はふと思い立ち、同窓会しようと二人を誘った。

晴天の空の下、公園に集まる詠一郎、操、あい。
操とあいはお母さんになっていた。
手作り弁当を三人で楽しそうに食べる。
詠一郎はあいに文句を言った。
「先生に言っといてよ。期待して最後まで読んだのに、俺たちのこと、たった二行しか書いていないじゃない」
「面白くなかったでしょ。私が思うに、あの人、恋愛小説の才能ないね」
三人は他愛もない話で盛り上がった。

そして帰り支度をした。
「また何年かしたら」
「また会おう」
「ねえ、こうしない? これから別々の方角に散っていく。決して後ろを振り返らない」
「よし」と詠一郎は去った。続いて、操、そしてあいが振り返らずに去っていく。
だが立ち止まり、振り返ったのは詠一郎。
操は迎えにきた家族のもとへ。
『俺という男は、あの二人の女に育てられたような気がする』
あいは耕作と子供のもとへ。
『女ってきっと、子宮の中だけじゃなく、人間を育てることのできる生き物なんだ』
女たちは幸せそうだ。
「俺……一人かよ」と孤独な自分に突っ込みを入れ、我が道を行く。

感想とシナリオ分析

いやぁ……終わってしまった。まだ見ていたいくらい面白かった。

正直、詠一郎が女二人に捨てられて終わりなのはかわいそうに思えた。
しかも人生を切り売りしたのに、前園耕作の小説は不出来かつ詠一郎を参考にしたのは二行という仕打ち。
とことん孤独の詠一郎。
ママの志麻子が拾ってくれるのかと思ったが、不倫した彼ただ一人は許されなかったようだ。

後日談で、脚本家の野沢尚氏や男性プロデューサーは、詠一郎と志麻子を一緒にさせることも考えていたようだが、女性スタッフの猛反対にあったという。
『詠一郎を幸せにさせてはならん』ということらしい。
軽いフットワークで妻と愛人の間を行ったり来たりしていた男は、結婚式で女二人から捨てられるだけでは「償い」になっていない、文壇バーのママと一緒にさせるなど言語道断、というわけだ。

不倫する男は、女の敵。
女性視聴者の顔色をうかがったら、詠一郎が幸せになるのは許されなかった。
だが野沢さんは、『男はゼロからのスタート』になると当初のプロット通りの結末に落ち着いたと語る。
彼ほどの脚本家はなかなか出てこない。故人となり本当に残念だ。

野沢氏は作家に向けて、以下のように言っているので、時代の後追いばかりしている昨今の脚本家やプロデューサーは耳を傾けてほしい。
『作家は現実を追いかけてはならない。現実の方から追いかけてくるような虚構を書くのが、おそらく作家の仕事だろう』
昔のフジテレビのドラマが面白かったのはこの姿勢だった。

そりゃあ、このドラマにも欠点はある。
外側はたしかに面白い。でも細かく、内側の設定を見つめれば、やや視聴者が追いつけてこられないような部分はたしかにあると思う。
あいが友情をとり、操に夫を差し出したくせに、後悔し許せないというのはどうなのか。
そもそも親友の夫を取る操は友だちなのか。
設定のアラはたしかにあり、途中こちらが理解し飲み込まなければ乗り切れない部分はあった。
それでもやはり挑戦的で面白いと思う。
何より、その設定のおかげで主人公が追い詰められるのが楽しくて仕方がなかった。
来週の詠一郎はどうなるのか、それが楽しみのドラマだったと思う。

制作現場で、「リアリティがないよね」とは昨今よく聞く言葉だ。
だが世間を見渡せば、何が起こるかわからない世界になっている。
移り変わる時代のスピードが早く、長年に渡って培った価値観は根底から覆りそうな、何もかもが想像つかない世の中になってきている。
会社員の頭では追いつけない明日が突然来ることはあるのだから、視聴者のつっこみを怖れてリアルを求めるよりも、もう少し面白い想像、いや創造をとってほしいと思う。
ぜひ再び『水曜日の情事』のようなドラマが生まれることを切に願います。

素晴らしかったセリフ

結婚の誓いを断った操。
詠一郎は理解を示し、苦笑した。
操は吹っ切れたように、キラキラした瞳で、爽やかに微笑みかけて、詠一郎に言った。

「詠一郎さん、わたしたち、あなたを捨てていいですか?」

「そういうこと、そんなきれいな笑顔で言うなよ。抱きしめたくなるだろ」