サスペンス

「踊る大捜査線」第9話 ネタバレ感想 | 1997年・冬ドラマ

踊る大捜査線

一つ一つのドラマには必ず脚本家、制作側がやりたかったことが反映されているはずだ。
昨今のドラマは申し訳ないが、何をやりたかったのか意図がわからない。ガワ(派手さとかキャスティングとか)はいいけど、単純で中身がないと感じることが多いです。

今回の9話で脚本家がやりたかったことが本に記されていました。
「事件の本筋と関係ないところで、所轄が仕事をしなければいけないということをやりたかった」
こういう小さいことにこだわるのって大事なんですよね。
踊るは各話でそういう部分をコメディに昇華して伝えようとするので印象にとても残ります。
さて、どんなシーンになっているのでしょうか。

「踊る大捜査線」第9話の感想と脚本を分析していきます。

「踊る大捜査線」は、FODでご覧いただけます。



登場人物

青島俊作――織田裕二
湾岸署刑事課強行犯係、巡査部長。脱サラ刑事。
コンピュータ会社の営業マンから警察官へ転職。練馬署地域課勤務を経て、湾岸署刑事課に勤務…

恩田すみれ――深津絵里
湾岸署刑事課盗犯係、巡査部長。
警視庁総務部婦人留置係から湾岸署盗犯係へ…

室井慎次――柳葉敏郎
警視庁刑事部捜査一課管理官、警視。
担当管理官として湾岸署にやってくる…

和久平八郎――いかりや長介
湾岸署刑事課強行犯係、巡査長。
八王子署刑事課勤務の際、同僚が目の前で殺害される過去がある。定年間近の刑事…

真下正義――ユースケ・サンタマリア
湾岸署刑事課強行犯係、警部補。
東大卒のキャリア組。湾岸署に研修として配置。警部の昇任試験の勉強中…

柏木雪乃――水野美紀
一般市民。日本帰国直後、父親が殺害される…

神田――北村総一朗
湾岸署署長、警視正。

秋山――斉藤暁
湾岸署副署長、警視。

袴田健吾――小野武彦
湾岸署刑事課課長、警部。

魚住二郎――佐戸井けん太
湾岸署刑事課強行犯係係長代理、警部補。

中西――小林すすむ
湾岸署刑事課盗犯係係長、警部補。

第9話あらすじ(ネタバレあり)

愛人がいることを妻に知られ、カッとなって殺害した夫が逮捕された。
そのニュースを見ている湾岸署の署員たち。管轄外なので他人事だ。
室井から署長に連絡が入る。マスコミの過熱報道が捜査の邪魔なのでなんとかしてほしい、それと事件関係者の保護を所轄にお願いしたい。

青島とすみれがその役目を任される。
だが保護する相手が、加害者の愛人とわかる。
「愛人を守るんですか?」と不満げのすみれ。
いやいやだが、保護に向かう二人。
すでにマスコミが殺到していた。

青島とすみれが、家から愛人を連れ出そうとするが、「なんで私が警察行かなきゃいけないの?」と拒否する。自分は事件と関係ないと言い張った。
唖然となる二人。

湾岸署に雪乃がやってくる。
本当に警察官を目指すという。
真下や和久、袴田課長も親身になって応援する。

青島とすみれが説得を続けるが、頑なに家を出ようとしない愛人。
だが部屋に石が投げ込まれて、ガラスが割れた。
すみれが変装して囮になり、その間に青島と愛人がマンションを出る。
追いかけてくるマスコミ。

青島は湾岸署に愛人を連れてくる。
ふてぶてしい態度に眉をひそめる一同。
湾岸署ロビーではマスコミと警察官がもみ合い。
「なんで人殺しの愛人守んなきゃいけないんですか!」

お腹が減ったとわがままを言い出す愛人。
事件と我関せずの様子に、怒る青島。
「事件の原因はあんただろ!」
「わたしがなにかの罪犯してるなら言いなさいよ! ほら、言いなさいよ!」と強気。
圧倒される青島。
「愛人だと思ってなめんなよ」

するとマスコミが刑事課まで入り込んできた。
慌ててみんなで入り口を阻止する。
その中に不穏な様子の記者が1名。
青島は少し嫌な予感がした。

日替わり。朝もマスコミは湾岸署のロビーに大勢いる。
朝食を買って戻る青島は、昨日の記者を見つける。
気になって近づくと、男は去っていく。

青島は急いで刑事課に戻り、怪しい男がいると室井に伝えようとする。
だが室井は容疑者を取り調べ中で忙しいと本庁刑事に相手にされない。
仕方ないので、男の写真を撮って送ることに。
報告書は次から次へと本庁へ送られていた。青島の報告もその束の中に埋もれてしまう。

青島は室井からの連絡を待ったがない。愛人にも怪しい男について聞いたが、わからない。
関係ないのだろうか。

捜査員が室井のもとに、被害者の兄が事件後、行方不明だと報告。
室井は嫌な予感。すぐに兄の写真を確認。すると湾岸署から怪しい男がいると連絡が前にあった。被害者の兄によく似ている。
「なぜすぐに報告しなかった?」
「……別にたいしたことじゃないと思いまして」と捜査員。
すでに愛人を帰すよう湾岸署に連絡済み。室井は慌てた。

男が刑事課へやってくる。
愛人が応接室から出てきた。青島とすみれがその後から出てきて、まっすぐ近づく男を見た。
「!」
刑事課の電話が鳴る。

「お前も死んだ妹のところへ行け」
男はナイフを出し、愛人に振りかざす。
青島は男に飛びかかった。
取っ組み合いになる。鳴り続けるコール音。
ナイフが青島の胸に刺さる。
逃げ惑う愛人を追いかける男。すみれがナイフを叩き落とそうとするが失敗。
署員が一斉に男を取り押さえようとするが、男は振りほどいて愛人を追いかける。
愛人の前に雪乃が……。
胸から血を流し、倒れていた青島が必死になって飛びかかる。
和久がすかさずナイフを蹴り上げた。
そして一斉に押さえかかり、男を逮捕。

倒れ込む青島。
「青島くん!」
すみれが介抱する。青島は「おかしい」という。あんまり痛くない。
胸ポケットに入っていたお守りがナイフから身を守ってくれていた。

ようやく鳴り続けるコール音に気づき、魚住係長が電話に出る。
室井からだった。今さら危険を知らせる。
「青島くん、刺されたの!」とすみれは怒った。
「……私の責任だ」と室井。
青島が電話を代わる。
「俺は今日まで室井さんの下で働いてると思ってやってきた……上がそんなことして、現場の俺たちに何しろっていうんだ、室井さん……!」

感想とシナリオ分析

9話は、踊るの象徴的な回だったと思います。
これがやりたかったんだとすごくわかった。

ピラミッド型の組織構造の欠陥。
「なんで所轄に情報がおりてこなかったんですか!」と青島。
末端の所轄に重要な情報がおりてこず、また本庁へ上げた重要な情報は無視された結果、青島は刺された。幸い大きな怪我もなく済んだが、事前に防ぐことができた事件だった。

こういった組織構造は警察に限らず、30年経ってもいまだに日本で根深く残っている。
機能不全が起きているのに、いっこうに変えようとしない。
その結果、末端で事件が起き、犠牲者を出してしまう。あるいは不祥事を起こす。

とても社会派なんだけど、うまくコメディに落とし込んでいる。
このすごさを改めて感じさせる回だった。

愛人の女が、刑事は意外に地味な仕事というように、所轄は嫌な役回りをさせられる。
それでも耐えて、愛人の警護でも職務を全うする姿は、一般視聴者の胸に刺さるところがあるだろう。
たいていの仕事は地味だし、理不尽だ。
しかし助け合う仲間がいて、部下を守ろうとする上司がいるだけで、辛い心は少し救われる。
この絶妙な湾岸署の仲間感、絆は憧れる。
ドラマには少し憧れる世界を描くと、視聴者は離れないのだ。

素晴らしかったセリフ

青島が刺され、室井に文句を言うすみれや青島。
袴田課長が慌てて電話を取り上げる。
「申し訳ございません。うちの者が生意気な口をきいて」と事なかれ主義のいつもの調子。
かと思ったら、室井の官僚答弁に思わず激怒した。

「わたしの部下の命を何だと思ってんだ!」

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