サスペンス

「踊る大捜査線」第3話 ネタバレ感想 | 1997年・冬ドラマ

踊る大捜査線

刑事もののストーリー構成はほぼ下記になる。

事件 → 捜査 → 暗礁 → 打開策 → 逮捕

この流れを無理に変えようとする脚本家はあまりいない。
なぜなら視聴者もこの流れを期待しているから。
一緒に謎解き(犯人探し)をするのが、刑事ドラマを鑑賞する醍醐味です。

だから、脚本家が考えるのは、
・どんな事件(できれば今までにない)を起こすのか?
・どんな捜査(謎解きのアプローチ)をするのか?
・どんな暗礁(捜査の壁)にぶち当たるのか?
・どんな打開策(斬新なアイデア)があるのか?
と、一つ一つ当てはめるようにやっていくと自然とストーリーが出来上がる。

ただ問題は、どの項目もネタが飽和状態なんです。
必ずどこかで見たことがあるといわれてしまう。

そこで、掛け算をする。
・見たことがある事件 × 犯人の意外な動機
・単純な捜査 × 捜査できない状態の刑事
・暗礁 × 内部の問題(大きな権力による外圧や横やり)
などと、もう一つ別の視点というか問題を作る。

こんな動機で事件を起こすのか!?とか、
ボーン・コレクターの四肢麻痺の元科学捜査官リンカーン・ライムやテレ東の記憶捜査の主人公、車椅子刑事の鬼塚一路などのようにキャラクターに捜査できない状態を作る、とか、
相棒では、目を負傷する右京さんがありました。

こういう掛け算をすることで、構成や解決のアプローチは同じだけど、気づきが変わって新しく見えるというのが今の作りになっているかと思います。
その先駆けが、踊るでした。

「踊る大捜査線」第3話の感想と脚本を分析していきます。

「踊る大捜査線」は、FODでご覧いただけます。



登場人物

青島俊作――織田裕二
湾岸署刑事課強行犯係、巡査部長。脱サラ刑事。
コンピュータ会社の営業マンから警察官へ転職。練馬署地域課勤務を経て、湾岸署刑事課に勤務…

恩田すみれ――深津絵里
湾岸署刑事課盗犯係、巡査部長。
警視庁総務部婦人留置係から湾岸署盗犯係へ…

室井慎次――柳葉敏郎
警視庁刑事部捜査一課管理官、警視。
担当管理官として湾岸署にやってくる…

和久平八郎――いかりや長介
湾岸署刑事課強行犯係、巡査長。
八王子署刑事課勤務の際、同僚が目の前で殺害される過去がある。定年間近の刑事…

真下正義――ユースケ・サンタマリア
湾岸署刑事課強行犯係、警部補。
東大卒のキャリア組。湾岸署に研修として配置。警部の昇任試験の勉強中…

柏木雪乃――水野美紀
一般市民。日本帰国直後、父親が殺害される…

神田――北村総一朗
湾岸署署長、警視正。

秋山――斉藤暁
湾岸署副署長、警視。

袴田健吾――小野武彦
湾岸署刑事課課長、警部。

魚住二郎――佐戸井けん太
湾岸署刑事課強行犯係係長代理、警部補。

中西――小林すすむ
湾岸署刑事課盗犯係係長、警部補。

第3話あらすじ(ネタバレあり)

通報があり、出動した青島たち湾岸署。
しかし現場は勝どき署の管轄。
青島は目の前で事件が起きているんだと向かうが、和久たちに止められる。
そのうち勝どき署の刑事がやって来た。
「おい! 空き地署が何のようだ!」
と、拡声マイクで怒鳴る。
縄張りを荒らすなとまで言われ、青島たちは呆れて帰ることに。

署に戻った青島は、病院を抜け出し行方不明の雪乃について調べる。
そこへひったくり犯に怪我を負わされた女子高生がやってくる。
すみれはひったくり犯に並々ならぬ怒りを覚えた。
そして目撃した婦警から話を聞き、犯人の似顔絵を描いた。

その頃、似顔絵にそっくりの男が父親に連れられ、警視庁の刑事部長室を訪れていた。
犯人の男はバッグを見てムラムラ来てひったくったと話す。
父親は息子に呆れながらも、懇意にしてる刑事部長に泣きつく。
そこへ室井が呼び出された。

高級官僚の父親は、室井になかったことにしてくれという。
前にも刑事部長には2度ほどもみ消してもらったと平然と話す。
刑事部長は今回、室井に全て任せると押し付ける。
「きみも警察の官僚だ。政治というものを勉強したまえ」

すみれは女子高生のひったくり被害を受理し進めていると、副署長の秋山がやってくる。
そして袴田課長を連れ、署長のところへ向かった。
彼らに、室井から命令が下る。

青島は和久のアドバイスで、雪乃を見つける。
彼女は父親の墓参りに来ていた。
青島が病院に戻るよう訴え、連れ戻した。

青島は、雪乃になぜ卒業間近で留学先から帰国したのかと尋ねる。
死んだお父さんに何か大きな秘密を隠している、それを告白できないから失声症になっているのではと話すと、雪乃は涙を流した。

真下がすみれを呼び出す。
「ひったくり犯は、建設省の官房次官の息子らしいです」
常習犯だが記録がないのは、
「捜査に圧力がかかってるのね?」と怒り心頭のすみれ。

袴田課長が戻り、捜査員にひったくりの件は捜査中止すると話す。
だが、すみれと目撃した婦警がいない。
彼女たちはマスコミに流すと逃走を図る。
袴田課長は大慌て。そこへ青島が戻った。
すぐにすみれと婦警を連行しろと訴えた。

上からの命令に従う捜査員たちはすみれを探し回る。
そして青島が留置場にいる彼女たちを見つけた。
ところがすみれに、手錠をかけられた青島。もう一方は鉄格子に。
すみれは事件をうやむやにしないと本気だ。

青島は官僚のやり方に彼女が気に食わないだけかと思ったがどうやら違う。
「ひったくりの犯人はほとんどが男。力の強い男が弱い女を狙う。これは暴力なの! あたしはそういう男どもを絶対に許さない」
「……すみれさんも、なにかされたことが……? この間、火曜日が怖いって」
「……怖いよ……」
すみれの腕には大きな切り傷が!
3年前、後ろか襲われひったくりにあった。けど犯人は2年で出てきた。それから毎週火曜日にすみれの前に現れる。
「どうして火曜に?」
「火曜日に逮捕した。きっと次は殺される……。怖いの……」とすみれ。

署長以下、袴田課長らが慌てて留置場へ来る。
「告発なんかしちゃいかん!」と署長。
すみれをなんとかなだめようとあの手この手をするが…

やがて室井が現れた。
すみれはそれでも譲らない。
「事件をマスコミに告発します」
「やめてください」
「なら、犯人を逮捕する」
「しないでください」

和久がやってくる。すみれに、青島の手錠を外せと訴える。
「手錠は刑事にするもんじゃない。相手が違うだろ」
すみれは青島に鍵を渡した。
そして、すみれを囲み、室井たち上層部が説得を試みる。

すみれは頑なに拒否していたが、室井が譲歩し、ひったくり犯の事情聴取を彼女にさせる。
その代わり、マスコミには話さないでくれという。
すると青島が呆れるように嘆息。
「これじゃ前いた会社と変わらないや」
青島は以前、小さなコンピュータ会社に勤めていた。そこで社員の使い込みがあったが、犯人は社長の親戚だった。口止めするため、社長は社員たちにボーナスを支払った。
「ぼく、もらいました……。サラリーマン辞めたのは、そういうもたれ合いがやになって、だから警官になったのに……」
「……」
「警察は会社じゃないでしょ!」
室井が刑事部長に電話をする。

そして官僚の父親と息子が弁護士を連れて現れた。
息子は、すみれに事情聴取を受ける。
立ち会う青島と室井。
息子は舐め腐った口調で、すみれの質問に、
「ぼくがやりました。反省しています」と繰り返す。
「弁護士にその言葉だけ言ってればいいって言われたの?」
「ぼくがやりました。反省しています」
虚しくなるすみれ。「帰りな」
そして取調室を出ていこうとする時、
「パパにお礼言わなきゃ」と言った。
我慢ならなかった青島がその男の胸ぐらを掴んだ。
慌てて扉を閉めて、室井が引き剥がそうとする。「内規違反だ!」
「いいか、よく覚えとけ。パパがえらいからって、何しても許されると思うな。許してくれるのはパパのお友達だけだ。おれたち現場の人間は違う」

息子は父親に泣きつく。「刑事に暴力を受けた! これは人権問題だ!」
弁護士は血相を変え、「本当ですか? 室井管理官、お答えください」
だが室井は青島をかばった。
「何もありませんでした」
「仲間同士かばい合うわけですか」と弁護士。
「なら、裁判にかけますか! そうなったら、マスコミにバレるぞ!」
と怒鳴る室井だった。

青島は雪乃の病室へ向かった。
今日は変な一日だった。刑事の仕事がなんなのかわからなくなった。
「自分らしくやるっていうのはけっこう難しいです。本当に難しいです」
一方的に話して去ろうとすると、雪乃が体を起こした。
「……青島さん……」
彼女は声を取り戻した。

感想とシナリオ分析

刑事ドラマ×官僚(政治家)。
このパターンは本当よくあります。
実際もいろいろあるんだと思います。
そして今回の話のように、権力者がバカ息子の犯罪を握りつぶすというネタはやり尽くされている。

でも、刑事モノをやると、どうしてもこのネタをやりたいと制作側は思うんですよね。
みんなこの不公平と理不尽さには我慢ならないですから。
ただ話としては、すぐ終わっちゃう話でもある。

だから前半はコメディにした。
告発したいすみれVS事を荒立てたくない上層部。
署長たちのやり取りが面白かったですね!

でも、すみれの告発したい動機が、権力者に対する不満や不公平とかではないことがわかると、話はより深いものに変わった。
純粋に、力で男が女を傷つけることが許せない、ここに青島や視聴者を共感させたことで、後半の事情聴取のシーンがよりカタルシスを得られる展開になった。

冒頭で少し説明した刑事ドラマの構成とは少し違うものに見えました。
けれど構成上は同じなんです。
まず、ひったくり犯の事件が起きた。
しかし早々に、捜査せずとも、犯人が自供し解決してしまう。
ただ、ゴールとなる犯人逮捕ができない、というカセを作った。
こうすることで、どうやってこの物語を解決するのかという興味がわきます。
逮捕したい主人公たちにとっても、暗礁に乗り上げたということになりました。
通常の逮捕と同様、犯人を聴取し、反省を促すことで打開策を図るが、犯人はまったく反省しないクズ野郎でした。
すみれは諦めてしまう。しかし、このままでは話が解決しない。
そこで、青島にすみれの思いを語らせた。
それでも犯人には響かない。
話が解決しないのかと思われたその時、
官僚側の室井が犯人を守る弁護士たちを怒鳴りつけることで視聴者の溜飲を下げた。
犯人逮捕以上のカタルシスを作ったことが、名場面を生み出したと思います。

素晴らしかったセリフ

室井とすみれが対峙する場面。
すみれ「誰の指示?」
室井「本庁の上の者です」
すみれ「本店にも骨のあるやついると思ったけど……あんたも所詮中間管理職なのね」
室井「……条件を出します」

「わたしは現場の捜査員。現場に政治持ち込まないで」

しかし、すみれはマスコミに話さない代わりに、ひったくり犯の事情聴取をすることで条件を飲む。
ところが男は反省せずに立ち去ろうとした。
青島の我慢は限界だった。

「パパが官僚だろうが、女を力ずくで傷つけるようなやつはおれたちがとことん追い詰める。おまえみたいなやつに傷つけられて、何年も苦しんでる女がいるのをお前知ってるのか。おれたちは区別しないぞ。そこまで計算して生きてないからな!」