ラブストーリー

「恋ノチカラ」第9話 ネタバレ感想 | 2002年・冬ドラマ

恋ノチカラ

前回、籐子は元カレの勇祐に二度目のプロポーズをされたが断った。
彼女の選択は、貫井企画に残ることだった。
しかしその選択はよかったのか?
貫井企画の経営は依然としてギリギリ。もし潰れたら籐子はどうなってしまうのか?

「恋ノチカラ」第9話の感想と脚本を分析していきます。

「恋ノチカラ」は、FODでご覧いただけます。



登場人物

本宮籐子(30)――深津絵里
「貫井企画」に勤める独身OL。
酔った勢いで貫井とキスをし、自分の思いに気づく。だが、貫井の恋人は同居人で性格のいい春菜。このまま思いを隠して、貫井企画にいられるか…

貫井功太郎(35)――堤真一
壮吾と新会社「貫井企画」を設立した人気クリエイター。
吉武が加わりクリエイティブの仕事に専念、春菜とも付き合う。が、籐子とキスをしてしまい…

木村壮吾(25)――坂口憲二
憧れていた貫井に誘われ、共同で貫井企画を立ち上げる。
悩みは、人妻の香里との今後…

倉持春菜(23)――矢田亜希子
籐子が昔、兄・勇祐と付き合っていた縁で、籐子とルームシェアをしている。
大好きな貫井と恋人になったが…

吉武宣夫(40)――西村雅彦
ユニバーサル広告社をやめて、敵対していた「貫井企画」の営業担当になる。
だが貫井企画はギリギリの経営。必死に仕事をとるが…

寺石香里(28)――久我陽子
壮吾と同じ金沢出身で、彼が高校時代のアルバイト先で、一目ぼれした女性。
既婚者だが、壮吾と度々連絡を取り合う仲で…

須田真季(30)――猫背椿
籐子の飲み友達で、ユニバーサル広告社の元同僚。

倉持勇祐――谷原章介
春菜の兄。籐子の元カレ。籐子が25才の時にプロポーズしたが失敗。今回もプロポーズするが…

第9話あらすじ(ネタバレあり)

貫井は相変わらず仕事がなくて暇だった。
前の会社のユニバーサルの後輩、中沢が脚光を浴び、「貫井の時代は終わった」と雑誌で語っていることに、籐子や壮吾たちは腹を立てた。
一方の貫井は、「言いたいやつには言わせておけばいい」とあっけらかんとしている。
その姿にホッとする籐子たち。

後日、中堅ビール会社の仕事を取ってくる吉武。
やる気になる貫井だが、吉武は仕事を壮吾に振る。貫井には別件の大手ビール会社が決まりそうだからというが……。
籐子は、暇なら春菜と旅行にでも行けばと提案するが、貫井は即却下。女と何時間も一緒にいたくないという。それはおかしいと責められる貫井。
籐子は、貫井が本当に好きなのかと疑念を抱く。
「好きじゃないんじゃないの……? それならとっとと別れちゃえば」と思わず口走った。

壮吾はそれを聞いて確信した。籐子は、貫井が好きなのだと。だからプロポーズを断ったのだ。
しかし貫井は全く気づいていない様子で……。

籐子は胸が苦しいの…と真季に相談。
「恋でもしてんじゃないの?」と言われ、激しく動揺する。
籐子はその時はっきりと気づいた。自分は貫井が好きなのだと……。

壮吾は絶好調だ。次から次へと仕事がくる。
貫井は退屈で、籐子と買い出しに行く。
そこへ春菜が現れる。しかし二人は喧嘩しながらもイチャイチャしているように見えて、そっと立ち去る。

その夜、貫井と春菜はディナーへ。
会話も弾まず、本音を話さない貫井に、春菜は言った。
「わたし……貫井さんの何なんですか?」
「えっ……」と言葉が詰まる貫井だった。

そして家に戻り、春菜は籐子に怒りをぶつけた。
「貫井さんが好きなのは、籐子さんなんじゃないですか?」
「はあ?」
「本当は籐子さんも貫井さんが好きなんじゃないですか? だからお兄ちゃんのプロポーズを断ったんじゃないですか? 二人は隠れて付き合ってるんじゃないですか?」
「!……」

翌日、あまりにも暇で、苦手なパーティーへ向かう貫井。付き添う籐子。
貫井は自分が事務所にいたら壮吾が仕事しづらいと思って出てきたのだと暗い声で話す。
タダ飯食べて帰りましょう、と励ます籐子。その明るさに救われる貫井。
ところが後輩の中沢と出くわす。

貫井は中沢の活躍を褒める。だが中沢は呆れ笑う。
「貫井さん。まだ気づかないんですか? あなたの名声は、あなたの実力なんかじゃなくて、ユニバーサルが作ったものなんですよ」
食事を持って戻ってきた籐子が聞いてしまう。
「自分には特別な才能があるとでも思ったんですか?」
「……」
「僕はユニバーサルの後ろ盾があってこその自分だって自覚してます。あなたのようなバカな真似は絶対にしません」
「だったらもっと堂々としてろよ。ユニバーサルがついてれば怖いものなしなんだろ。貫井企画なんて相手になんないんだろ。だったらここで俺に突っかかったりしてるんじゃねーよ」
「貫井企画は十分怖いですよ。でもそれは、あなたではなく、木村壮吾がいるからです」
そして例のビール会社の広告は、貫井NGで壮吾指名だったと知る。
ショックで立ち去る貫井。後を追いかける籐子。その背後で中沢があざ笑い、
「もうあなたの時代は終わったんですよ」

バーで泥酔した貫井を家まで運ぶ籐子。
おしゃれな部屋に、くしゃくしゃになった雑誌を発見。中沢が貫井をボロクソに語った雑誌だ。
貫井は気にしていない様子だったが、よっぽど悔しかったのだと気づく。
「本宮……」と呼ぶので、籐子が近づく。
寝言のように「ここにいろ」と言って、籐子の手を掴んだ。
「……」

翌日から貫井は事務所で険しい顔をして、一言も話さなくなる。
そんな貫井を気遣い、貫井企画の事務所の雰囲気は暗い。籐子にもきつい言葉を吐く。
春菜からの電話も着信拒否する貫井。
その連日の雰囲気に我慢できず、壮吾が自分の仕事を貫井に与える。
「俺をかわいそうだと思ってるのか? いつからそんな偉くなったんだ。下手な気使ってんじゃねぇよ!」と逆ギレ。
「そっちが気を使わせてるんじゃないですか!」
「悪いのは俺か。事務所にいたら迷惑だって言いたいんだな! じゃあ出てってやるよ」と出ていく。

空中分解寸前の貫井企画。貫井の後を追いかけ、探し回る籐子。
貫井を見つけるが声をかけられない。
と、近くに自販機を見つける。貫井がデザインした缶コーヒーがある。
貫井にそれを差し出す籐子。受け取る貫井。

「俺、事務所抜けるわ……」
「……」
海外にでも行って一から勉強し、再出発すると話す貫井。
だが籐子はそれは再出発ではなく、逃げ出すってことだと思うという。
「お前に何がわかる!」と貫井は激怒。
悲しそうに見つめる籐子。
「俺には才能なんてなかったんだ。こんなもん(缶コーヒー)、誰が作ったって同じだったんだ」と、地面に叩きつけた。
ボロボロの缶コーヒーを見つめる籐子。
「最低……」
その缶コーヒーはいわば、貫井作品の代名詞といえるもの。それを簡単に捨てたことに、籐子は「がっかりした!」と去っていく。

感想とシナリオ分析

クリエイターの貫井が自信喪失になっていく描き方が絶妙でした。
これは脚本家もクリエイターだから、気持ちがすごくわかるんでしょうね。

個人でクリエイティブの仕事をしていると、必ず仕事の波があるものです。
貫井企画でもよく出てくる”レギュラーの仕事”がない限り、かなりきつい仕事なんですよね。
毎年、単発の仕事を続けると、いつか途切れるかもという不安で、うまく集中できなくなる。
そして本当に途絶えた時、不安に負け、それが自分には才能がないからだと全否定してしまう気持ち、本当によくわかります。

仕事がない=才能がない、わけではなくて、タイミングの問題なんです。
来るときは才能に関係なく来るものだし、こればっかりは本当にタイミングだと思います。
私自身も経験があるのでわかるのですが、仕事がない時こそインプットのチャンスなんですよね。
クリエイティブの仕事はアウトプットですから、それをずっと続ける、仕事がずっと続いている状態ってなかなか逆に恐怖ですよ。
だからインプットする時間ができた時は本当によかったと安堵します。
そしてタイミングよく仕事はまた来ますから、その時に発揮すれば何の心配もありません。

でも貫井は初めて仕事が途切れるという経験をした。
ユニバーサルにいたら仕事がなくなるなんてことは絶対ないし、でもそのせいでクオリティがどんどん下がっていることに嫌気が差して彼は辞めた。
貫井企画はクオリティが高いものを追求するために作ったのに、仕事がないことで彼はすべてを見失い、勝手に自信をなくして、今までの実績を全否定してしまった。

そりゃあ、貫井に憧れて集まった籐子や壮吾、吉武が怒るのも無理はありません。
「わたし、ユニバーサルにいた頃、たった一度だけ言葉を交わしたことがあります。貫井さん、『これ俺がデザインしたんだ。かっこいいだろ』ってわたしに缶コーヒーをくれたんです。本当に誇らしそうな顔して笑ってました。自分に対して何の疑いも持ってない強さとか、真っ直ぐさとか、輝きみたいなものを感じました。ものすごくかっこよかった。わたしはそういう貫井さんだからついていこうと思ったのに、そういう貫井さんが……そういう貫井さんが……好きだったのに」
誰も貫井が終わったなんて仲間は思ってない。
自分で自分を終わらせようとするその姿に、籐子たちは心底がっかりした。
しかし籐子の真っ直ぐな言葉に、貫井は気付かされたのではないだろうか。

また、籐子の恋心の面も実にうまい揺れ動きを描いていると感じた。
強気だった男が、弱っていると少し魅力に見える。母性本能がくすぐられるからだ。
「壊れちゃいそう」と貫井を心配する籐子。守ってあげたいと感じたのだろう。その優しさは愛だ。
しかし、ラストではぴしっとそんな弱いあなたを好きになったんじゃないと目を覚ませようとするその優しさも愛だった。
男を甘やかすだけの女性の愛はまだ甘い。嫌われることを覚悟で、男の尻を叩く愛こそ本物なのかもしれない。
とても面白い回でした。

素晴らしかったセリフ

貫井が自分でデザインした缶コーヒーを叩きつけて捨てたことに、ショックを受けた籐子の言葉。

「貫井さんが今まで作ってきたものたちは、そんなに簡単に捨てられちゃうものだったんだ。貫いてきた理想も信念も、中身は空っぽの見せかけだったんだ。勘違いだった? 幻想だった? 全くそのとおりですよね。そんなもの真に受けて、ずっと憧れてたなんてバカみたい。がっかりした!」

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