ラブストーリー

「恋ノチカラ」第1話 ネタバレ感想 | 2002年・冬ドラマ

恋ノチカラ

もし、昔のドラマはセリフも感性も現代にそぐわない、
そんなふうに食わず嫌いでいる人がいたら、ぜひ「恋ノチカラ」を見てほしい。
もう20年近く前の作品になるがちっとも色褪せない。とても普遍的なテーマを描いた作品。

脚本家の相沢友子氏は、
『誰もが思うとてもささやかな気持ち、悩みをクローズアップして書いた』という。
そのささやかな気持ち、悩みは、現代の働く女性も当時の女性たちと同じだろう。
だから今でも古く感じずに見られるのだと思う。

ただ少し変わってきたのは、『30歳』という節目の年になる重みの差ではないか。
当時の女性、社会は、”30”という年齢をすごくネガティブにとらえていた。
その歳で独身でいると、それはもうかわいそうという視線が周囲からビシビシくるわけである。
陰で、『売れ残り』や『行き遅れ』、『おばさん』、『ババア』などと揶揄されていた。

20年前、世間がそう30歳の独身女性を見てくるわけだから、
当然、主人公の籐子も30を迎え、自分は「もう終わった」と思っている。
やりたい仕事もできず、結婚も好きな人もおらず、収入も上がらない。
未来に希望が持てず、もう自分には青春時代のようなキラキラした日々はないのだと諦めている。

ところがひょんな勘違いから人生が少しずつ変わっていく。
マイナスからのスタートとなった籐子が、自分の手で欲しかった未来を勝ち取っていく姿にワクワクすること間違いありません。
「恋ノチカラ」第1話の感想と脚本を分析していきます。

「恋ノチカラ」は、FODでご覧いただけます。



登場人物

本宮籐子(30)――深津絵里
大手広告会社「ユニバーサル広告社」に勤める独身OL。
3年前まではクリエイティブに属していたが、仕事上の失敗から庶務課に左遷された。
惰性的な日々を送っていたが、突然「貫井企画」に引き抜かれる。ところが人違いと知り…

貫井功太郎(35)――堤真一
ユニバーサル広告社に勤める人気クリエイター。
仕事一筋で女っ気がない。仕事で上司と意見が対立したため退職し、壮吾と新会社「貫井企画」を設立するが次々と妨害にあい…

木村壮吾(25)――坂口憲二
広告会社「ABCアド」に勤めていたが、憧れていた貫井に誘われ、共同で貫井企画を立ち上げる。
お調子者で女好きであるが、仕事に対する姿勢は真面目で、実力もある。

倉持春菜(23)――矢田亜希子
籐子が昔、兄・勇祐と付き合っていた縁で、籐子とルームシェアをしている。
お嬢様育ちであるが、昼は銀行で働き、夜は図書館の司書になるため勉強している。

吉武宣夫(40)――西村雅彦
ユニバーサル広告社営業部勤務。
クリエイターに敵対心があり、「貫井企画」の営業を妨害しようと企てるが…

須田真季(30)――猫背椿
籐子の飲み友達で、ユニバーサル広告社の同僚。

第1話あらすじ(ネタバレあり)

夜、一人寂しくワインとポテチを食べながら、テレビを見ている本宮籐子。
部屋は散らかし放題で、しばらく男がこの部屋に近づいた様子はない。
籐子は大手広告会社ユニバーサル広告社に勤める30才のOL。
恋人もしばらくおらず、仕事もクリエイティブから庶務課に移り、惰性的な日々を送っていた。

そんな籐子とルームシェアする倉持春菜は、若くて明るくいつも楽しそうだ。
籐子のために朝食を作ってくれる優しい女性で、家柄もいいお嬢様。
だが彼女の兄は、籐子の元カレだ。

二日酔いで出社する籐子にからむのは同僚の須田真季。
籐子と同い年で同じ悩みを持ち、焦りを感じながら生きている。

ユニバーサル広告社には、カリスマ的なクリエイターの貫井功太郎がいる。
何度も受賞をし、籐子の後輩たちから憧れで話題の的だ。
籐子も以前クリエイティブに所属していたが、貫井は遠い存在の人だった。

社内で貫井が大声を上げた。間違って熱い缶コーヒーを買ってしまったのだ。
彼は冷たい缶コーヒーしか飲まない。
偶然目撃した籐子は思い出した。
籐子がクリエイティブにいた頃、仕事は失敗続きで落ち込んでいると、貫井に缶コーヒーをもらったのだ。
その缶コーヒーのパッケージは彼がデザインしたもので、少年のように目をキラキラさせて籐子に自慢した。
おまけに失敗だと烙印を押された彼女のデザインを見て、貫井は悪くないと言ってくれた。
そんな貫井に籐子はひそかに憧れ惹かれた。だがそれは叶わぬ思いだと心の奥底にしまっている。
彼の視界にも籐子は映っていなかった。

籐子は真季と飲みに行った。
貫井に憧れる20代の後輩たちと自分たちを比較し、ため息まじりに愚痴を漏らす。
「あんなふうに無邪気にはしゃげたのは遠い昔だわ。今じゃいい男を見ても胸がキューンとしたりしないもん」
だが冷静になり、「それってやばいよね……」と語り合う。
悲壮感が漂う30代の女性のリアル……

『この世に生まれて三十年と六ヶ月十九日。
もう恋をすることなんてないだろうと思っていた。』
籐子の人生のドラマが始まろうとしていた。

一方の貫井も環境の変化が必要な時期にきていた。
広告は仕事ではあるが、作品という自負が彼にはあった。だが会社はあくまで商品だと考える。
貫井のこだわりよりも、納期を守って仕事をさばいてくれとの要望に、彼は我慢の限界だった。
後輩の中沢が止めるのも振り切って、貫井は会社を辞め、独立すると宣言する。
「クライアントは僕にみんなついてきますよ」と強気だ。

さっそく貫井は彼を慕う木村壮吾に連絡を取った。
他社の広告代理店に勤める彼は、広告業界の若手クリエイターとして注目されている。
その彼と組んで会社を起こそうというのだ。
壮吾の条件は一つ、会社に女性社員を雇ってほしい。
貫井もある女性を引き抜けたら雇ってもいいと言った。

翌日、籐子の耳にも貫井の独立話が入る。
そんな折、彼と組む壮吾から、籐子と話がしたいと連絡が来た。
何の話かと行くと、ぜひ籐子にも貫井企画の一員になってもらいたいという。
それは貫井たっての希望だと聞いて、思わず驚きの声を上げる。

有頂天の籐子。一緒に喜んでくれる春菜は、絶対に貫井企画へ行くべきと背中を押す。
一方、親友の真季は冷静になるべきだと言った。退屈でも大企業の給料と終身雇用という安定を天秤にかけて考えなさい、と。
籐子の気持ちは激しく揺れた。

貫井も独立は前途洋々ではないだろうと不安だった。
彼を心配する営業の吉武宣夫は引き留めようとする。
だが貫井は後に引く気はないと言った。とりあえずISFコンピュータの仕事は確保していると伝える。
吉武もISFは貫井には足を向けて寝られないから大丈夫だろうと言った。

困惑しながらも籐子は、新しい一歩を踏み出す覚悟を決めた。
だが、いざ新会社の貫井企画に出向いてみると、貫井から「人違いだった」と告げられる。
入社は認められないという事実に、籐子は愕然となる。
「バカにしないでよ。私は会社を辞めて来たのよ! どう責任を取ってくれるのよ!」
そこへ電話が鳴った。貫井の大手クライアントだった会社から次々と取引停止の連絡が入った。
貫井企画は、籐子どころではない事態に……

残るはISFコンピュータのみ。ここを断られると新会社は立ち行かなくなる。
だが担当者は貫井のおかげで会社が復活したから引き続き依頼すると約束してくれた。

籐子は翌日も出社すると、貫井から「来たのかよ」と冷たい一言が。
「明日も来ますよ」とめげない籐子。
そして電話をとる。求人広告の依頼で、貫井と壮吾に伝えるが二人はやる気なし。
「いちいち俺たちに聞くな。そんなことも一人でできないのか」と貫井。
仕方なく籐子は一人で求人広告の依頼先の楠木文具へ向かった。

貫井はISFコンピュータへ向かうと、会社から後輩だった中沢が出てきた。
担当者は渋い顔でいる。そして仕事を断られた。
すぐに元会社で信頼する吉武に連絡をした。「どういうことなのか?」
吉武は何も知らないと言った。
その頃、籐子は元会社の上司に相談していた。会社に戻れないだろうかと。
話を聞いていた吉武が近づいた。そして戻れるよう取り計らうと約束する。
吉武は何か裏がある感じだ……

籐子は貫井企画に戻ると、屋上で落ち込んでいる貫井がいる。
壮吾と仕事のやりがいについて話していた。
「忙しいことはいいことだけど、あんなに仕事量が増えちゃ、一つ一つのクオリティーは下がる一方だよな。なんかさぁ、自分がどんどんダメになっていくような気がする。いくら金が稼げたって、人から評価されたって、俺が楽しくなったら意味がない。そういうの、やっぱりわがままなのかねー」
壮吾が楠木文具のロゴを持ってやってきた籐子に気づいた。
貫井はこの会社は潰れるという。籐子も元の会社に戻ると言って去った。

籐子は家に帰り、考えていた。
半年前、30歳の記念すべき誕生日に風邪を引いた。何もうまくいかず、どうでもいいやとなってからどうでもよく生きている。
だが貫井は違う。こだわりを持ち、自分の信念に忠実だ。
そんな男が理不尽な妨害でポキっと折れそうになっている。一方、自分は泥船から逃げ出そうとしている。

翌日、手続きのため元の会社に行き、吉武と会う籐子。
「あなたの選択は賢明ですよ。人は誰でも夢や理想だけを追って生きたいと思っている。しかし現実はそんな生易しいものじゃない。そんな生き方をできる人間なんて存在しやしない。あなたいくつですか?」
「30です」
「年齢っていうのは私たちから確実に可能性を奪っていってしまう。それを補ってくれるのは安定と保証だけだ」
籐子も納得したが、吉武が席を外したときに偶然取った会社の電話で、ある事実を知った。
貫井の妨害をことごとくやっていたのは、吉武だったのだ。

籐子は再雇用の手続きをせずに、貫井企画へ向かった。
そして貫井に彼がパッケージデザインした冷たい缶コーヒーを渡す。
元の会社には戻れなかったと嘘をつく籐子。
だが貫井は、「もう俺たちには何の希望も残されてない。うちの事務所は終わったんだ」と言った。
籐子は思わず怒りの声を上げた。
「終わってないわよ! まだ始まってもいないじゃない!」

感想とシナリオ分析

仕事と年齢。
我々はそれを天秤にかけて、諦めてしまうことがよくある。

「仕事はつまらなくても一応大企業の終身雇用っていう安定があるのにそれ捨てることないんじゃない?」
30歳を過ぎた親友の言葉だ。
「これが25だったら、(貫井企画に)懸けてもいいけど、あたしたち30過ぎてんだから」
もっともらしく聞こえる。
籐子も一度は納得した。

だがどうも引っかかる。
それは果たして生きているといえるだろうか。
惰性的な日々を消化し、安定に甘んじることが生きた証になるのか。
人生は選択の連続だが、その選択は諦めになっていないか。

30という節目の年齢はいつの時代もそういった壁にぶち当たる。
見渡せば、誰もが妥協しながら、ふがいない自分の人生に折り合いをつけて生きている。
そういう人生を歩み、酒を飲んで忘れるのが常だ。
時々、挑戦し成功した者を見ると、あんなもんはまぐれだと認めない。
でも心の奥底で、なぜあのとき自分は挑戦しなかったのかと後悔が押し寄せる。

年齢が我々の可能性を奪うのではなくて、
我々が年齢を理由に可能性を放棄している。
これが実態だとこのドラマは教えてくれる。
我々はただ勇気がないだけだ。
人生はシンプルなのに、困難にしているのはいつも自分自身。
自分がどうしたいか、どうありたいか、目的が自分の人生をつくっているのだから年齢は関係ない。

覚悟を決めたとき、本当の人生が動き出す。
籐子はどう変わっていくのか、2話が気になります!

素晴らしかったセリフ

次々と元の会社の妨害にあい、仕事を失う貫井企画。
それでも貫井は譲れない仕事への思いを語ったセリフ。

「俺さ、ただ自分の創ったものに愛情を持っていたいだけなんだよ。胸張って、これかっこいいだろって言ってたいだけなんだよ」

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