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「王様のレストラン」第9話 ネタバレ感想 | 1995年・春ドラマ

王様のレストラン

前回、シェフのしずかにパリの有名レストランから引き抜き話が持ち上がった。
引き止めてほしいしずかに対し、「料理人にとって最大の名誉」と後押しした千石。
しずかに辞められると店がやばいと、他の従業員たちはあの手この手で引き止めようとする。
だが結局しずかは面接へ向かった。
…ように見えたが、しずかは面接をすっぽかして店に戻ってきた。

「最も優秀なシェフは、恋をしているシェフ」と、誰かが言うように、
しずかは千石に恋をしていて、ベル・エキップに残ったのだった。
これで店存亡の危機は免れたのだが、新たなる危機が範朝によってもたらされそうになっている。
いったいどんな危機が9話で起きたのか、感想と脚本を分析していきます。

「王様のレストラン」は、FODでご覧いただけます。



登場人物

千石 武 (52)――松本幸四郎
初代オーナー時代のベル・エキップで働いていた伝説のギャルソン。初代オーナーと親友だった。
その後ギャルソンを卒業したが、オーナーの息子の禄郎に誘われ、ベル・エキップ再建に向け、様々な仕掛けをする…

原田 禄郎(24)――筒井道隆
パトロン(オーナー)。初代オーナーの愛人の息子、範朝の腹違いの弟。
かなりのお人好しで鈍感。だが元経理の経験や心優しい思いやり精神を活かし、オーナーとしてベル・エキップの再建を目指していく…

磯野 しずか――山口智子
シェフ・ド・キュイジーヌ(総料理長)。
千石との出会いからシェフとして成長著しい。ベル・エキップの看板メニューとなる『オマール海老のびっくりムース』を考案し、かつての店の勢いを取り戻す…

三条 政子(28)――鈴木京香
バルマン(バーテンダー)。
範朝の元愛人。なんとなく働いていたが、次第にベル・エキップが流行り、従業員たちの熱心な働きぶりを見て、自分もその仲間になりたいと彼女なりの努力をする…

水原 範朝――西村雅彦
ディレクトール(総支配人)。禄郎の腹違いの兄。
ベル・エキップの再建より、カラーひよこの新規事業で一攫千金を目論む。
妻の出産を知られ、政子と愛人関係が終わった…

梶原 民生(52)――小野武彦
メートル・ドテル(食堂支配人)。
予約客の名前も覚えず、料理についても不勉強で仕事にやる気が見られなかったが、元家族にかっこ悪い姿は見せられないと変化を見せた。しかしスケベはなおらない…

稲毛 成志――梶原善
シェフ・パティシエ(お菓子職人)。
しずかに一度フラれているが、未だに惚れている様子。畠山とライバル関係…

大庭 金四郎――白井晃
ソムリエ。
ワインでたくさんの受賞歴があり自信もあるが、自分の意見を客に押しつけるところがあり嫌われる。

和田 一――伊藤俊人
コミ(ウェイター)。
梶原の下で働いているせいで、ギャルソンの仕事を理解していない。だが、千石は「彼は身のこなしが機敏で、いいギャルソンになる」と意外に評価されている…

畠山 秀忠(30)――田口浩正
スー・シェフ(副料理長)。
作るより食べてばかりいる。しずかが好きな様子。稲毛は嫌い…

佐々木 教綱――杉本隆吾
プロンジュール(皿洗い)。
しょっちゅう皿を割る…

ジュラール・デュヴィヴィエ――ジャッケー・ローロン
ガルド・マンジェ(食材係)。
元路上でアクセサリーを売っていたただのフランス人。

第9話あらすじ(ネタバレあり)

「まずい食材はない。まずい料理があるだけだ。」
ミッシェル・サラゲッタというフランス人シェフの言葉。

ベル・エキップの定休日は月曜日。
範朝は会社で寝泊まりをしていた。
起きて、ソファーに座ると自分の眼鏡を壊してしまう。
彼は挫折ばかりの人生を振り返る。
8年かけて大学を卒業しようとしたが、卒論の盗作がバレて卒業できず…
フォークシンガーとしてデビューしたが、CD1枚出して引退…
ベル・エキップの経営を任されたがあっという間に店を傾け、突然現れた義弟に店の経営権を奪われた…
店が再建していくとどんどん居場所がなくなり、今は7色のひよこを作ろうと奮闘している。

父の遺産を全部カラーひよこ事業につっこみ、
足りなくなると、街の金融業者からも借金をした。
それでも足りないと、妻の実家からこっそり金を持ち出し、家を追い出された。
範朝は事業さえ軌道に乗れば大丈夫とずっと信じていた。

だが、ブルーの卵から生まれてきたのは黄色のひよこだった。
業者に連絡すると電話は使われておらず、やっぱり詐欺だった。
大借金をかかえ、範朝は人生の崖っぷちに立っている…
範朝に残された道は、店の売上金を横領するか、権利書を流用してさらに借金するかの選択に追い込まれていた。

賢い人間ならば、やめるべきなのはわかるが、範朝は賢くなかった。
結局、権利書を持って借金に行こうとしたところ、定休日にもかかわらず和田の指導による、禄郎、しずか、梶原、政子、大庭ら、従業員たちのコーラス練習のため、店に来た。
皆の前に出るに出られない範朝。

範朝は一枚だが、CDを出したことのある元プロ歌手。
やがておだてられるまま指導をすることになり、その間に上着のポケットにこっそり入れた売上金を政子に見つけられてしまう。
政子は禄郎に伝え、カラーひよこ事業に手を出していることを教えた。
禄郎は意を決し、週末の売上金が消えていると範朝に訴えた。
戻ってくれば大事にはしないと話し、返すよう促した。
義弟の温情を無視し、範朝は最後までとぼけた。

ところが大庭のジャケットを間違って持ってきてしまい、大庭が範朝の上着に売上金があることに気づいた。
千石もやって来て、今度は権利書も見つけられてしまった。
範朝は店の権利書を担保に借金をするつもりだった。

義兄をかばう禄郎だが、皆の気持ちはおさまらない。
そんな人間を店においておくわけにはいかないと千石も禄郎に言った。
しずかに意見を求めると、範朝はいてもいなくてもどっちでもいいと言われてしまう。
禄郎は納得せず、「自分がオーナーになって誰かを不幸にするのは嫌だ」と譲らない。
「彼を切らなければ周りの人間が不幸になる」と千石も譲らず対立した。

「ベル・エキップを本当のレストランにするには切り捨てるべきものは切り捨てる。オーナーにはそういう勇気を持ってほしい」

軟禁状態にされた範朝はひよこに餌をやっていた。
そこへ政子がやってきた。範朝は家庭もダメになった。残ったのはひよこしかない。
「やり直せないか?」と訊いた。
「勝手なこと言わないで」と政子にも断られた。

禄郎は従業員たちを集めた。
そして義兄の不祥事を詫びる。だが、これからもディレクトール(総支配人)として働いてもらうと宣言し、千石は慌てた。
従業員たちからも非難と疑問の声が上がる。
「根は悪い人間じゃないから。以上」
従業員たちの士気は下がった。
それを見て、範朝は、「断る」と言った。「もうお前の下で働くのはごめんだ」

禄郎は引き止めたが、範朝は言った。
「俺にだってプライドがある。親父がいた頃は親父にさんざん馬鹿にされてきた。やっと死んだと思ったらお前らだ。いつだって俺はダメな男の代表だ」
それでも「お兄さんの役に立ちたい」という禄郎。
「俺が兄貴で、お前が弟だ。お前から優しい言葉をかけられるたびに、俺の心はズタズタになっていくんだ」
「僕はお兄さんが好きです。たった一人の兄弟だから。だから辞めるなんて言わないでください。せっかく会えたんだから。せっかく一緒に働けるんだから」
と、歩み寄って手を握る。
その弟の手に、兄はすがった。

それを見たしずかがコーラスの練習を再開しようと戻った。
大庭が戻り、和田、梶原、稲毛……政子が戻っていく。
「範朝さん」と、戻るよう声をかけた。
範朝は千石をちらりと見てから戻った。
そんな従業員たちの姿を静かに見つめる千石。
「ごめんなさい」と謝る禄郎に、千石はただ黙ってうなずいた。

コーラスの練習後、しずかは千石に「オーナーはいいヤツだね」と言った。
「無類のお人好し。しかしそれが必ずネックになるときが来る。近い将来必ずにね」と千石。

皆が帰ったと思い、範朝は店を出ようとすると、千石に声をかけられた。
「逃げるつもりですか?」
「これ以上弟に迷惑はかけられない」
「弟さんの気持ちを大事にしてあげてください。もし本当に申し訳ないと思われるのなら、あなたはここに残るべきです。そしてディレクトールの職務を全うすべきです」
「俺には無理だ。足を引っ張るだけだ」
「いや、そんなことはない。あなたにも偉大なオーナーシェフの血は流れています。自分を信じるんです。あなた自身が信じてやれなくていったい誰が信じるんです」
「不思議だな。あんたと話してると親父を思い出すよ……」
政子が範朝を迎えに来た。彼はベル・エキップに残ることにした。

感想とシナリオ分析

どうしようもない人間だが、憎めない範朝。
しかし彼はついに店の金に手を付けようとした。
みんなで再建し育てたベル・エキップを彼はなくそうとしたのだ。
そんな裏切りに従業員たちは怒った。
千石は表に出さなかったが誰よりも怒っていたに違いない。
彼は禄郎に、範朝を切るべきだと迫った。
一度は了解したかに見えたが、禄郎は範朝を切らなかった。

切らない理由は、ようやく兄弟が再会できて、一緒に働けるんだからという強い思いだった。
そんな仲間意識を不安視していた千石は複雑だった。
一方で嬉しくもあったと思う。
前オーナーシェフにその優しさがあれば、千石は店を辞めなかったとかつて語っていた。
そんな自分が、前オーナーシェフのように、範朝を切ろうと考えていた。

それでも千石はその禄郎の優しさが必ず近い将来ネックになると語る。
誰かを切る決断が近い将来待ち受けているからだ。
それは禄郎にとってとてつもなく辛いことになる。
でもやらなければいけない。ベル・エキップの成長のために。
千石はそう考えている。

ベル・エキップ最大の危機が迫っているという。
10話でベル・エキップはどうなってしまうのか、楽しみです。

素晴らしかったセリフ

従業員たちからダメ人間だと責められ、範朝はベル・エキップを去ろうとした。
禄郎だけが引き止めたが、範朝にもプライドがあった、そのセリフ。

「俺をただの役立たずだと思うな。運が悪かっただけなんだ。ほんのちょっと歯車が噛み合わなかっただけなんだ。とてつもなく長い厄年が続いてるだけなんだ」