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「王様のレストラン」第7話 ネタバレ感想 | 1995年・春ドラマ

王様のレストラン

前回、新メニュー『オマール海老のびっくりムース』の評判が上々で、ベル・エキップはかつての勢いを取り戻しつつあった。
店が成長し変化する中、まったく変わらないメートル・ドテル(食堂支配人)の梶原。
そこへ彼の元妻と息子が訪れた。
梶原はつい見栄をはり、自分は総支配人だと元家族に嘘をつく。
その嘘のせいで、千石や従業員を巻き込み、困難に直面する。
彼は総支配人として役割を演じざるを得ず、しかしそれがきっかけで真のギャルソンとして成長する変化を見せた。

一流の店へ着実に一人ひとりが成長していくベル・エキップだが、その一方で梶原の変化は今後の千石の存在意義を問うかたちになってしまった。
とはいえベル・エキップには、まだ成長が必要なキャラクターがいる。
7話では誰の成長が見られたのか、感想と脚本を分析していきます。

「王様のレストラン」は、FODでご覧いただけます。



登場人物

千石 武 (52)――松本幸四郎
初代オーナー時代のベル・エキップで働いていた伝説のギャルソン。初代オーナーと親友だった。
その後ギャルソンを卒業したが、オーナーの息子の禄郎に誘われ、ベル・エキップ再建に向け、様々な仕掛けをする…

原田 禄郎(24)――筒井道隆
パトロン(オーナー)。初代オーナーの愛人の息子、範朝の腹違いの弟。
かなりのお人好しで鈍感。だが元経理の経験や心優しい思いやり精神を活かし、オーナーとしてベル・エキップの再建を目指していく…

磯野 しずか――山口智子
シェフ・ド・キュイジーヌ(総料理長)。
千石との出会いからシェフとして成長著しい。ベル・エキップの看板メニューとなる『オマール海老のびっくりムース』を考案し、かつての店の勢いを取り戻す…

三条 政子(28)――鈴木京香
バルマン(バーテンダー)。
範朝の元愛人。なんとなく働いていたが、しずかの『オマール海老のびっくりムース』が評判で、それに触発される。別れてからも範朝が少し心配…

水原 範朝――西村雅彦
ディレクトール(総支配人)。禄郎の腹違いの兄。
ベル・エキップの再建より、カラーひよこの新規事業で一攫千金を目論む。
妻の出産を知られ、政子と愛人関係が終わった…

梶原 民生(52)――小野武彦
メートル・ドテル(食堂支配人)。
予約客の名前も覚えず、料理についても不勉強で仕事にやる気が見られなかったが、元家族にかっこ悪い姿は見せられないと変化を見せた。しかしスケベはなおらない…

稲毛 成志――梶原善
シェフ・パティシエ(お菓子職人)。
しずかに一度フラれているが、未だに惚れている様子。畠山とライバル関係…

大庭 金四郎――白井晃
ソムリエ。
ワインでたくさんの受賞歴があり自信もあるが、自分の意見を客に押しつけるところがあり嫌われる。

和田 一――伊藤俊人
コミ(ウェイター)。
梶原の下で働いているせいで、ギャルソンの仕事を理解していない。だが、千石は「彼は身のこなしが機敏で、いいギャルソンになる」と意外に評価されている…

畠山 秀忠(30)――田口浩正
スー・シェフ(副料理長)。
作るより食べてばかりいる。しずかが好きな様子。稲毛は嫌い…

佐々木 教綱――杉本隆吾
プロンジュール(皿洗い)。
しょっちゅう皿を割る…

ジュラール・デュヴィヴィエ――ジャッケー・ローロン
ガルド・マンジェ(食材係)。
元路上でアクセサリーを売っていたただのフランス人。

第7話あらすじ(ネタバレあり)

「歴史は、鍋で作られる。」
ミッシェル・サラゲッタというフランス人シェフの言葉。

国際経済会議の予定されていたホテルに爆弾を仕掛けたという電話があったため、急きょマスコミに知られていないベル・エキップが会場に選ばれた。
禄郎は話が大きすぎると不安げ。
「成功すれば店にとってこれ以上の宣伝はありません。失敗すればこれ以上の打撃はない」と千石。

事前に店をチェックしにきた大臣秘書の犬丸は横柄なやつだった。
料理には期待していない、まして日本の女性フレンチシェフなんて…と嫌味を言われる。
店の評判になると思い引き受けたが、極秘会談でマスコミにも知られたくない様子。
ベル・エキップになにかメリットがあるのか…

それでも従業員らは、VIPを迎える準備をすることにした。
範朝は粗相のないよういつも以上にやれという一方、千石は肩肘を張らず他のお客様と同じようにという。
「我々はいつもお客様を王様として扱っています。今夜はたかだか大臣クラスです」

厨房には強面のSPがしずかたちを見張っている。
しずかは意に介さず、いつもどおり橋幸夫を歌いながら料理を作る。

範朝のところへ前回の借金取りがきた。カラーひよこは詐欺だと言われる。
ひよこを扱う人間に悪い人はいないと範朝は信じるが、工場に機材が納入される見込みはない。
借金取りは、取り立てに来たわけじゃなかった。礼を言いに来たとわかる。
弟の禄郎が借金の肩代わりをしたと兄は知った。

VIPは約束の時間に遅れてやって来た。
会議が決裂し、訪れたEU代表・コンスタンタンと日本代表・猿渡大臣は不機嫌の極みにあった。
「今に日本は世界から孤立するでしょう」
「日本だけがルール違反をしているように言うが、お宅らだって勝手にやってるだろ」と、二人の間に歩み寄る様子は全くない。

しずかの作った料理は、手がつけられないまま次々に下げられる。
「日本人の作ったフレンチは食べる気になれない」とコンスタンタン。
気まずい時間だけが過ぎていく。

しずかは爆発寸前。
梶原はマジックで、大庭はジョークで、範朝と禄郎もテーブルに行ってムードを変えようとするがことごとく失敗。

デザートを作っていた稲毛だが、もう帰ると日本代表。
急ぐ中、瓶の蓋が固くて開かない。厨房の頑張りを見ていたSPが見かねて蓋を開けた。
デザートは完成し、テーブルに運ばれた。SPにも配られた。

しかしVIPは誰一人、口にしない。
デザートは溶けていく。
しずかは客に挨拶しつつ文句を言うと、範朝に連れ出された。
政子も怒り心頭で、千石に「とっとと食いやがれ」はフランス語で何ていうのかと尋ねた。
すると政子がテーブルに行き、フランス語でまくし立てた。
コンスタンタンは急いで口にし、猿渡にも暴言を吐き、怒らせた。

千石が謝罪に向かう。しかし、料理がまずかったわけではない。問題はそちらにあったと主張。
「今夜我々は最高のディナーを用意いたしました。それは従業員に代わって、この私がはっきりと断言できます」
するとコンスタンタンは、政子に感謝した。まるで母親に怒られたみたいだった、となぜか感動している。
もう一度食事を楽しみましょう、と呼びかけて一からやり直すことになった。

しずかは政子に感謝した。
ようやく政子もベル・エキップの一員になれて、笑顔を見せる。
千石は、政子を「素晴らしい」と褒めた。

実は政子が「早く食べなさい」とまくし立てたフランス語は、
「坊や。お口動いてませんよ」という母親が子供に言うときのフランス語だったと聞かされる。
千石が政子に嘘のフランス語を教えていたと知って、彼女はまた笑顔になった。

食事を終えたコンスタンタンは上機嫌だった。
明日の会議はうまくいきそうだと秘書の犬丸。
「ここの料理のおかげだ」と猿渡大臣もご満悦。
そして来週の予約を貸し切りで頼むと言った。
だがその日は別の予約客がいて、貸し切りは無理だと断ると、犬丸が激怒。
「人は料理の前では平等でございます」と譲らない千石に、猿渡が貸し切りじゃなくていいと納得して帰っていった。
来週の予約客はあの厨房にいたSPの家族。禄郎は厨房のピンチを救った彼を無下には絶対できなかったのだ。

こうしてベル・エキップの長い夜は無事に終わった。

感想とシナリオ分析

今回は、ベル・エキップにとって最大のチャンスが訪れた。
開店以来最大のVIPがやって来たのだ。
ところが事前の国際会議で両者は険悪ムード。
料理はほとんど手がつけられないまま、口にしても冷めた頃に食べているのでまずい。
それに文句をつけられ、従業員は皆怒り心頭だ。

その中でも人知れず悔しい気持ちを抱いていたのは三条政子だった。
彼女は範朝の愛人になったことがきっかけでなんとなくバルマン(バーテンダー)として働き、彼と別れた後は店の高いワインを勝手に飲んだことでその酒代を払うためただ働きしている状態。
なんとか店に貢献しようとするが、自作のカクテルはまずく、センスがない。

皆が成長する中、いまだにベル・エキップの一員になりきれていないと感じていた。
その彼女がこの険悪ムードを打破し、ベル・エキップの料理やおもてなしの素晴らしさを伝えることになった。
政子はこうしてベル・エキップの一員となった。

さらに彼女は笑顔にコンプレックスを持っていたが、このことがきっかけで『ヨーロッパ経済を救った女』として、雑誌の表紙を笑顔で飾る。
心のない笑顔で有名だった彼女は、本当の笑顔を取り戻した。
ベル・エキップの困難を乗り越えるとき、誰かが成長する。
このドラマのフォーマットは単純でわかりやすく、キャラクター変化の見せ所がどれも清々しく、見るものを気持ちよくする。

やはり『王様のレストラン』は最高の作品だと思った。

8話では誰が変化するのか、ベル・エキップにどんな試練が待っているのか楽しみです。

素晴らしかったセリフ

温かいうちに食べなかった彼らが悪いのに、肉がかたい、料理が冷たいという大臣。
政子は、料理人たちは最高のものを出そうと努力した。
「ここは食事を楽しむ場所です」
無礼だと帰ろうとする大臣に千石は「これだけは忘れないでください」と言った。

「最高のディナーを味わうためにはお客様の力も必要であるということ。いくら素晴らしい料理でも食べる側の人間のコンディションが悪ければ、美味しさは半減します」