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「王様のレストラン」第3話 ネタバレ感想 | 1995年・春ドラマ

王様のレストラン

前回、『ベル・エキップ』の厨房は千石の策略で大わらわになった。
今まで作ったことがない料理を作るうち、厨房にいたそれぞれに役割が与えられた。
そして何より、シェフのしずかの眠っていた才能が目覚めた。

しかし千石はまだ満足していない。
ベル・エキップを再建するため、今回はどんな仕掛けをするのか。
3話の感想と脚本を分析していきます。

「王様のレストラン」は、FODでご覧いただけます。



登場人物

千石 武 (52)――松本幸四郎
初代オーナー時代のベル・エキップで働いていた伝説のギャルソン。初代オーナーと親友だった。
その後ギャルソンを卒業したが、オーナーの息子の禄郎に誘われ、ベル・エキップ再建に向けて動き出す…

原田 禄郎(24)――筒井道隆
パトロン(オーナー)。初代オーナーの愛人の息子、範朝の腹違いの弟。
ベル・エキップ再建に張り切るのだが、かなりのド天然でおっちょこちょいのため、いるだけで迷惑をかける…

磯野 しずか――山口智子
シェフ・ド・キュイジーヌ(総料理長)。
才能を千石に高く評価されているが、経験が乏しくまだ自信がない。大ざっぱな性格のため盛り付けが苦手…

三条 政子(28)――鈴木京香
バルマン(バーテンダー)。
範朝の愛人で、なんとなく働いている。しずかに嫌われている…

水原 範朝――西村雅彦
ディレクトール(総支配人)。禄郎の腹違いの兄。
借金のベル・エキップを弟になすりつけ、カラーひよこの新規事業で一攫千金を目論むが…

梶原 民生(52)――小野武彦
メートル・ドテル(食堂支配人)。
予約客の名前も覚えず、料理についても不勉強で仕事にやる気が見られない。

稲毛 成志――梶原善
シェフ・パティシエ(お菓子職人)。
しずかのことを気にしてばかりいる。

大庭 金四郎――白井晃
ソムリエ。
ワインに詳しく自信もあるが、自分の意見を客に押しつけるところがあり嫌われる。

和田 一――伊藤俊人
コミ(ウェイター)。
梶原の下で働いているせいで、ギャルソンの仕事を理解していない。

畠山 秀忠(30)――田口浩正
スー・シェフ(副料理長)。
作るより食べてばかりいる。しずかが好きな様子。

佐々木 教綱――杉本隆吾
プロンジュール(皿洗い)。
しょっちゅう皿を割る…

ジュラール・デュヴィヴィエ――ジャッケー・ローロン
ガルド・マンジェ(食材係)。
元路上でアクセサリーを売っていたただのフランス人。

第3話あらすじ(ネタバレあり)

「人生で大事なことは、何を食べるか、ではなく、どこで食べるか、である」
ミッシェル・サラゲッタというフランス人シェフの言葉。

経営者の性格は、そのまま店のイメージにつながる。
初日から失敗続きで自信を失っている新人オーナーの禄郎。
「一度割ったたまごはもうもとに戻すことはできない」
禄郎に誘われギャルソンに復帰した千石は、彼を励ました。

禄郎は従業員を集めて、『5つのP』の訓示を述べた。
パワー、パッション、プッシュ、プロフェッショナル……、ポパイと言って唖然とさせる……

店の経営状態は想像以上に悪かった。
禄郎は元サラリーマンで経理を担当していた。切り詰められるところは切り詰めるしかない。
すると千石が、「誰かのクビを切るしかない」と人員削減を提案。
だが禄郎は「僕が来たことで誰かが不幸になるのは嫌だ」と反対。
「店が潰れると全員が路頭に迷う」と千石も譲らない。
店を傾かせた張本人の範朝はどっちつかずだ。
そこで誰に辞めてもらうかを決めるため、従業員一人ひとりの面接をすることになった。

年長者の梶原から順に始まる。
梶原の泣き落としで、単純な禄郎は彼を切れないと思う。
バーテンダーの三条政子は、好意があるので必ず残すと言う兄弟。
ウェイターの和田は、病気の母を養わないと大変だと大げさにアピール。範朝は疑うが、千石は「彼は身のこなしが機敏で、いいギャルソンになる」と意外に評価していた。

パティシエの稲毛は、新作のデザートを出し、禄郎の好きなスイーツを作ると張り切ってアピール。
だが厨房に戻ると深刻な顔でクビになるのは自分だと話し、副料理長の畠山を油断させる。
畠山は正直に店の食材をたくさん食べていると話し、切るなら彼だ、と範朝。
ソムリエの大庭はたくさんの受賞歴をアピール。性格に難ありだが、三人は「素晴らしい」というほかない。

そして厨房でもクビ候補と思われている皿洗いの佐々木。
彼はしょっちゅう皿を割り、面接前にも割ってしまう……
箔がつく、フランス人だからという理由で入ったデュヴィヴィエもクビ候補だ……

そこへしずかが現れた。彼女は怒っている。
「誰かが辞めなきゃいけないなら私が辞める」
逆に引き止める三人。
しずかは、政子が辞めるならわかるというと、禄郎と範朝が即座に却下する。
「あの人はあれでいいんです!」
しずかは納得できず、誰かがもし辞めるのなら、自分か、政子か、高給取りの千石だと言って去った。

迷いに迷う禄郎。千石はその人の特性を活かせばいい、とアドバイスするが、禄郎は誰の特性を活かせばいいのかわからない。
千石は答えず、「オーナーの飲みかけのコーヒーでございます」と、冷めたコーヒーを置いて去っていった。

一人になった禄郎はその冷めたコーヒーを飲んだ。
そして何かに気づき、帳簿と向き合った。
商社で経理をしていた自分の特性を活かすことにしたのだ。

まかないを食べているみんなの前で発表する禄郎。
改めて店の支出を計算し導き出した答えは……
制服のクリーニング代、店の掃除代、従業員のタクシー代、コーヒー代、食事代で総額30万をカットできる。
それは佐々木とデュヴィヴィエの給料二人分だった。
みんなが我慢すれば、二人を辞めさせずに済むと突きつけた。
もちろん従業員たちから異論はでなかった。
千石は「素晴らしい!」と禄郎を称えた。

禄郎は気づいた。千石は最初から誰も辞めさせる気はなかったのだと。
「もしあなたが誰かをクビにしたら、その時はわたしが辞めるつもりでした」
千石は禄郎のオーナーの資質を引き出すために仕掛けたことだったのだ。
「もうなんにも心配することはありません。あなたは立派なオーナーだ」

感想とシナリオ分析

驚きました。どれだけ省エネのドラマなんでしょう。
開店前の出来事をドラマにしました。

ドラマのパターンとして、『ベル・エキップ』にやって来たお客が事件を起こし、その問題に千石の助言があって、みんなで解決に向かい、成長する。これが王道パターンだと思います。
しばらくそれで続け、7、8話で変わり種のパターンをいれるのが通常のドラマ。

しかし三谷脚本は違う。
3話で、ゲストなし、フランス料理なし、大きな事件もなしでドラマを作った。

かねてからベル・エキップの問題は経営難でした。
それは問題ではあるが、事件になりません。
そこで人員削減という小さな事件、当事者にとっては大きな事件を作った。
それを仕掛けたのが千石でした。

いったい誰を禄郎が切るのかに注目しながら見るのですが、いまいち乗れない。
正直まだ3話。
キャラクターに感情移入をそこまでしていないので誰が切られてもいい状態です。
皿洗いとフランス人のキャラは劇中でも言っているが、いなくても大差ありません。

そして禄郎の解決策に注目が集まった。
その解決策で、彼らを切ってもいいと思って見ていた視聴者は、その考えが間違っていたと気付かされた。
いい裏切りでした。
キャラクターたちも経費削減で割りを食うが、清々しいその解決策に大満足です。

禄郎にヒントを出しながら、正解へと導かせるその千石の手腕こそ「素晴らしい」と最後気付かされるのも上手かった。
彼らの成長を今後も追っていきたいと思わせたいい話でした。
4話では誰の眠っている才能を、千石が目を覚まさせるのか楽しみです。

素晴らしかったセリフ

店の赤字は毎月50万。
経営改善のため、従業員の人員削減は避けられない。
誰を切るべきなのかと悩む新オーナーの禄郎。
そんな悩む彼に、すぐに人を切るという安易な判断をするのではなく、オーナーならオーナーができる特性を活かしてくれ、と暗に促した千石のおしゃれなセリフ。

「料理の基本は、素材の特性を活かすことです」