コメディ

「王様のレストラン」第1話 ネタバレ感想 | 1995年・春ドラマ

王様のレストラン

2019年TBS系の秋ドラマ『グランメゾン東京』がヒットした。
シェフの尾花夏樹とオーナーシェフの早見倫子が開店したフレンチレストランが、ミシュランの三つ星獲得を目指して奮闘するドラマだ。

約20数年前、フジテレビでもフレンチレストランが舞台のドラマがあった。
それが『王様のレストラン』だ。
落ちぶれたレストランが、伝説のギャルソンの登場により、再び一流のレストランを目指すというお話。

「人生で起こることは、すべて皿の上でも起こる」
そんな語りから始まり、舞台であるフレンチレストラン『ベル・エキップ』で、様々な問題が巻き起こり、仲間の皆で解決するシチュエーションコメディの好編。

脚本家の三谷幸喜氏が、「がんばれベアーズ」のようなスポーツ・サクセスものを、スポーツ以外の設定に置き換えてやってみようというのが始まりだったそうです。
執筆は苦労されたようで、「ホテルに缶詰めになっていて、ガード下の牛丼屋に通いながら、フレンチレストランの話を書くというシュールな毎日を送っていた」という。

店から出ない、ワンシチュエーションという縛りを設けて作られた傑作の「王様のレストラン」第1話の感想と脚本を分析していきます。

「王様のレストラン」は、FODでご覧いただけます。



登場人物

千石 武 (52)――松本幸四郎
初代オーナー時代のベル・エキップで働いていた伝説のギャルソン。初代オーナーと親友だった。
その後ギャルソンを卒業し、給食センターで働いていたが、オーナーの息子の禄郎にベル・エキップ再建を手伝ってほしいと頼まれる…

原田 禄郎(24)――筒井道隆
パトロン(オーナー)。初代オーナーの愛人の息子、範朝の腹違いの弟。
父の遺言で突然パトロンになるが、右も左も分からず、父と一緒に働いていた千石に手伝ってほしいと頼むが…

磯野 しずか――山口智子
シェフ・ド・キュイジーヌ(総料理長)。
初代オーナーシェフの死後、シェフに昇格したが荷が重く、別の仕事先を探している。
以前パリに住んでいた時、客として3年通い続けた有名店の「サーモンの臓物パイ」の味を見事に再現したことで、その才能を千石に高く評価される…

三条 政子(28)――鈴木京香
バルマン(バーテンダー)。
範朝の愛人で、なんとなく働いている。

水原 範朝――西村雅彦
ディレクトール(総支配人)。禄郎の腹違いの兄。
オーナーシェフだった父から引き継いだベル・エキップをすぐに傾かせた張本人。

梶原 民生(52)――小野武彦
メートル・ドテル(食堂支配人)。
予約客の名前も覚えず、料理についても不勉強で仕事にやる気が見られない。

稲毛 成志――梶原善
シェフ・パティシエ(お菓子職人)。
しずかのことを気にしてばかりいる。

大庭 金四郎――白井晃
ソムリエ。
ワインに詳しく自信もあるが、自分の意見を客に押しつけるところがあり嫌われる。

和田 一――伊藤俊人
コミ(ウェイター)。
梶原の下で働いているせいで、ギャルソンの仕事を理解していない。

畠山 秀忠(30)――田口浩正
スー・シェフ(副料理長)。
作るより食べてばかりいる。しずかが好きな様子。

佐々木 教綱――杉本隆吾
プロンジュール(皿洗い)。

ジュラール・デュヴィヴィエ――ジャッケー・ローロン
ガルド・マンジェ(食材係)。

第1話あらすじ(ネタバレあり)

「人生で起こることは、すべて、皿の上でも起こる。」
ミッシェル・サラゲッタというフランス人シェフの言葉。

都内にあるフレンチレストラン『ベル・エキップ』。
その店内で、この店のオーナーシェフが、静かに息を引き取った。

話は、その死から数週間後のある夜のベル・エキップ――
予約客の原田禄郎が現れた。
名前を何度も間違えるギャルソンの梶原と和田は仕事にやる気が見られない。
店内も閑散としていた。

食前酒の注文に来たソムリエの大庭も客の禄郎に不親切な対応。
厨房にいるシェフの磯野しずかを筆頭にみんなやる気がない。
しずかが気にしていることは、自信作のサーモンの臓物パイが注文で出ること。
バルマンの三条政子も一応グラスを並べたりしているが暇そうだ……

そこへ、紳士な客が店にやってきた。彼は、千石武。
禄郎の連れの相手だった。
「ご無沙汰しています」と挨拶。
彼らが最後に会ったのは、禄郎が幼稚園児以来だという。

さっそく注文しようとするが、メニューを見ておどおどする禄郎。
対して千石は、ギャルソンに料理の説明を要求し、次々と注文をする。
食事の際も禄郎がフランス料理のマナーブックを手にかしこまっていると、それを没収する千石。
「ここは食事を楽しむ場所です。腹が空いたら食べる。飯を食うのにルールはありません」

ワインの注文のやり取りから千石がワインに造詣が深いと気づいたソムリエが本当のことを話す。
「あなたのような方はもっとまともなお店に行く方がいい」
さらに千石が注文したワインは、ワインリストにあるがこの店にはないと教える。

頭を抱えだす千石。
次の瞬間、「見える」と口走り、店の酒蔵にそのワインがどこにあるか言い当てた。
「何者だ……?」と恐れおののく梶原と和田。
それを支配人兼オーナーの水原範朝に伝えた。
範朝は、彼らの正体が気になった……

禄郎はこの店の初代オーナーの息子とわかる。
千石はそのとき一緒に働いていたようだ。

範朝が店のバーカウンターへやってくる。
三条政子とは不倫関係らしいことがわかる。
しばし禄郎と千石を観察し、彼らのテーブルにやってきて挨拶をした。

禄郎は範朝を「変なやつ」という。
だが千石は範朝を覚えていた。そして範朝が禄郎の兄だと教えた。

範朝はどこかで千石を見たことあるが思い出せず、探りを入れるため、スー・シェフの畠山を客にして彼らの隣の席に座らせた。

禄郎は父の遺言で、この店のオーナーになるつもりだと千石に話す。
だから千石に手伝ってほしいと頼んだ。
だが「私はギャルソンを卒業した」と千石。彼は今、給食センターで働いていた。

そんな話をしている隣で、しずかの料理が好きな畠山は食べることに夢中だった。
そこへ頼んでいないサーモンの臓物パイが大量にきた。
その食べっぷりに、千石と禄郎も注文する。
注文が入ることを待ち望んでいたしずかが厨房で「よっしゃー」と喜んだ。

千石と禄郎の話は平行線だった。
「一流の店に必要なのは、偉大なシェフと、ギャルソン、そしてオーナーです」と千石。
禄郎の父で初代オーナーシェフは、偉大なシェフだったが、偉大なオーナーではなかった。
その結果が今の『ベル・エキップ』の惨状だと教える。この店は最低だ、と。そして、
「一億積まれても手伝う気になれない」と厳しい言葉を浴びせる千石だった。

その時、カップルの客が騒ぎ出した。
ワインの注文を巡ってソムリエと男性客がもめている。
千石は、梶原に行かせてどう収めるのか見てみようと禄郎とその様子を見つめた。

だがその客があまりにも失礼で、我慢できなくなった千石。
ジャケットを脱ぐと、テーブルクロスを腰に巻いた。見た目はギャルソンだ。
そして配膳する和田の代わりに料理を受け取り、失礼な客の前にやってきた。
「お引き取りください。私どもはお前さまの家来ではありません。お帰りください」
客も店の人間も驚いた。
厨房にいた、しずかたちも覗きにくる。
そして千石は本当にカップル客を追い出してしまう。

その事の顛末を見届けたしずかは、次の仕事探しを始めた。
一方で禄郎は希望を感じた。この店に千石が必要だと……
話を聞いた範朝が彼らのテーブルに現れた。
千石はシェフを呼んでほしいと頼む。
ところがしずかは辞退し、代わりにパティシエの稲毛が千石の前にやって来た。
だが千石はシェフは彼ではなく、女性だと言い当てる。

そろそろ料理のコースも終わりになった。
禄郎は再度、千石に店再建の協力を頼む。
だが頑なに断る千石。
禄郎は立ち去る彼を引き止めようとする。おぼろげに覚えていた尊敬する父の姿は、父じゃなかった。千石だったことを思い出したと話す。
「僕はもう一度あの頃のあなたが見たい。お願いします」

千石は足を止めて振り返る。
「一流のギャルソンは、ギャラも一流だってこと」
「僕の給料を減らしても僕は千石さんと仕事がしたい!」
その若者の熱意に負けた千石。ベル・エキップの名前の由来を禄郎に語る。
「ベル・エキップの意味は良き、友」
一流の店へ再建するため協力することを千石は決めた。

禄郎はオーナーは自分で、ギャルソンは千石がいる。この店が一流になるには偉大なシェフが必要だがどうしようかと相談する。
すると千石はもう厨房にいるといった。
サーモンの臓物パイを一口食べ、しずかの眠っている才能に気がついた。

そして範朝を呼び、禄郎が新しいオーナーになり、千石もギャルソンで復帰することを伝える。
さらに禄郎が弟だと伝えると、絶句する範朝だった……

感想とシナリオ分析

『ベル・エキップ』の店で起きるワンシチュエーションもの。
45分間まったく飽きずに見せるのは、かなり脚本が良くないとできません。
とても面白かった。

エピソードの最初の部分をティーザーという。
視聴者の関心をつかまないといけないから、かなりこだわり、派手にしたり、謎を入れたりして心をつかもうとする。
昨今はその開始5分が大事だといわれ、現場では特に力を入れる。
ところがそんなティーザーを気にしなくても、面白いものは面白いと教えてくれるのが「王様のレストラン」だ。

「人生で起こることは、すべて、皿の上でも起こる。」

この始まりだけで、正直心は持っていかれる。
そしてこの表現こそがこのドラマを一言で語っているからオシャレだと感心する。

登場人物も皆がユニークだ。
これといった善人も悪人も出てこない。
だが皆が記憶に残るキャラクターになっている。

話は、千石がギャルソンとして復帰するのか否かの会話がほとんどだ。
ところが失礼な客が店に登場してから、アクションが生まれた。
千石が失礼な客に我慢ができず、注意しに向かう場面は印象的でかっこよかった。
伝説のギャルソンとはいったいどういうものかわからなかったが、一発でそれを表現した。

しかし店の再建を手伝うことを断り続けていた千石が、なぜそのようなアクションをとったのか分かりづらい場面でもあった。
そのどうしての表現がまた素晴らしかった。
彼が「ちょっと行ってきましょう」と立ち上がる前、しずかの自信作の「サーモンの臓物パイ」を一口食べていた。
それが千石に変化と行動を与えたターニングポイントだった。

サーモンの臓物パイを一口食べた皿のカットだけで表現したのは、説明過多の現代のドラマと違い、とても素敵だった。

素晴らしかったセリフ

千石が失礼な客にお帰りくださいと言って、客はさらに激怒する。
すると千石は静かな口調でこういった。

「先輩のギャルソンにお客様は王様であると教えられました。しかし先輩は言いました。王様の中には、首をはねられた奴も大勢いる、と」