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「王様のレストラン」第10話 ネタバレ感想 | 1995年・春ドラマ

王様のレストラン

前回、範朝がカラーひよこ事業の詐欺に気づき、大借金を抱えた。
そこで店の売上金を横領し、店の権利書を持ち出そうとしたが従業員たちに見つかる。
千石は、範朝をクビにするようオーナーの禄郎に迫った。
だが禄郎は、義兄の範朝のクビを切らなかった。
たった一人の兄弟だから、という理由にこだわり、従業員たちをも納得させる展開となった。
しかしその優しさが、ベル・エキップにとって必ずネックになるときが近い将来訪れると千石は言った。
10話でベル・エキップ最大の危機は起きたのか、感想と脚本を分析していきます。

「王様のレストラン」は、FODでご覧いただけます。



登場人物

千石 武 (52)――松本幸四郎
初代オーナー時代のベル・エキップで働いていた伝説のギャルソン。初代オーナーと親友だった。
その後ギャルソンを卒業したが、オーナーの息子の禄郎に誘われ、ベル・エキップ再建に向け、様々な仕掛けをする…

原田 禄郎(24)――筒井道隆
パトロン(オーナー)。初代オーナーの愛人の息子、範朝の腹違いの弟。
かなりのド天然で鈍感。だが元経理の経験や心優しい思いやり精神を活かし、オーナーとしてベル・エキップの再建を目指していく…

磯野 しずか――山口智子
シェフ・ド・キュイジーヌ(総料理長)。
千石との出会いからシェフとして成長著しい。ベル・エキップの看板メニューとなる『オマール海老のびっくりムース』を考案し、かつての店の勢いを取り戻す…

三条 政子(28)――鈴木京香
バルマン(バーテンダー)。
範朝の元愛人。なんとなく働いていたが、次第にベル・エキップが流行り、従業員たちの熱心な働きぶりを見て、自分もその仲間になりたいと彼女なりの努力をする…

水原 範朝――西村雅彦
ディレクトール(総支配人)。禄郎の腹違いの兄。
カラーひよこの新規事業で一攫千金を目論んだが、詐欺とわかり、大借金を抱える。
ベル・エキップを辞める寸前までいったが、禄郎によって救われた…

梶原 民生(52)――小野武彦
メートル・ドテル(食堂支配人)。
予約客の名前も覚えず、料理についても不勉強で仕事にやる気が見られなかったが、元家族にかっこ悪い姿は見せられないと変化を見せた。しかしスケベはなおらない…

稲毛 成志――梶原善
シェフ・パティシエ(お菓子職人)。
しずかに一度フラれているが、未だに惚れている様子。畠山とライバル関係…

大庭 金四郎――白井晃
ソムリエ。
ワインでたくさんの受賞歴があり自信もあるが、自分の意見を客に押しつけるところがあり嫌われる。

和田 一――伊藤俊人
コミ(ウェイター)。
梶原の下で働いているせいで、ギャルソンの仕事を理解していない。だが、千石は「彼は身のこなしが機敏で、いいギャルソンになる」と意外に評価されている…

畠山 秀忠(30)――田口浩正
スー・シェフ(副料理長)。
作るより食べてばかりいる。しずかが好きな様子。稲毛は嫌い…

佐々木 教綱――杉本隆吾
プロンジュール(皿洗い)。
しょっちゅう皿を割る…

ジュラール・デュヴィヴィエ――ジャッケー・ローロン
ガルド・マンジェ(食材係)。
元路上でアクセサリーを売っていたただのフランス人。

第10話あらすじ(ネタバレあり)

「若者よ、書を捨て、デザートを頼め。」
ミッシェル・サラゲッタというフランス人シェフの言葉。

最高のデザートは、人生のあらゆる悩みを忘れさせてくれる。
だが、パティシエの稲毛は、自分のデザートに自信が持てず悩んでいた。
ベル・エキップは、一流までに、あと一歩のところまで来ている。
シェフのしずかの料理と千石の努力がその要因だ。
だが今日も客はデザートを残し、稲毛はこの店の足を引っ張っていると感じていた。

そんな時、ベル・エキップが雑誌に取り上げられた。
しずかの料理が褒められているのに対し、稲毛のデザートは酷評されている。
禄郎は「そんなことない」と不満げだが、千石は批評通りだと稲毛を評価していなかった。

厨房にはデザートの部分を巧みに隠した記事のコピーが張り出されたが、稲毛は雑誌を探し出し、その記事を読んでしまう。
「俺……やっぱり足引っ張ってるのかな……?」
「ぐいぐい……」と答えてしまう千石。
稲毛は「やめようかな」と様子をうかがうと、
「やめる人間を止める気はありません」と千石に肩を叩かれた。

落ち込んでワイン蔵に閉じこもる稲毛。
しずかと禄郎が仕事に戻れと説得するが、稲毛は動かない。
千石に「やめろ」と言われたと彼はしょぼくれる。
それに禄郎が怒った。しずかも信じられなかった。

範朝に稲毛の様子を伝えに行くと、政子といい雰囲気。
鈍感の禄郎は気づかず、しずかが二人はヨリが戻ったと教えた。
畠山もなぜかワイン蔵の木箱にはまり動けない。
失恋し、ワイン蔵で落ち込む禄郎を稲毛と共に励ました。

彼らの空いた穴は、しずかと千石が埋めていた。
ソムリエの大庭はワイン蔵で落ち込む稲毛と禄郎に言った。
「僕はこの仕事に誇りを持っている。だから仕事場を放棄して、ここにうずくまっている君たちの姿ははっきり言って正視に耐えない」
禄郎は反省し、稲毛にも仕事場に戻るよう言った。
「稲毛さんはこの店に必要な人です。誰が何を言っても稲毛さんに残ってもらう。約束します」
そうして稲毛と禄郎は戻っていった。

閉店後、千石と禄郎は話し合った。
「ベル・エキップを一流の店にするためには、稲毛のデザートはふさわしくない」と千石。
そしてデザートの大切さを訴えた。
「彼にチャンスを与えてあげてください。お願いします」と禄郎。
「オーナー。料理というものはセンスです。生まれ持った才能が左右する。それはある程度までは努力でできる。しかしそれ以上は……。私には、すぐに仕事を放棄してしまうような人間が、立派なパティシエになれるとはどうしても思えないんです」
「そんなのやってみないとわかんないじゃないですか!」
「オーナー、あなたがもし本当にこの店を一流にしたいと思うんだったら新しいパティシエを雇うべきです」
「できません」
「やるべきです。私はこの店を一流のフレンチレストランにするためにやってきたんです。あと一歩で、その夢が叶うところまで来てるんです。それが今、たった一人の人間のために足を引っ張られている」
「稲毛さんには残ってもらいます! 僕はこのメンバーで店を一流にしてみせる!」
「妙な仲間意識は捨てるべきです!」
「だったら一流になんかならなくたっていい。そこまでして一流になりたいと思いません」
千石は絶句した……

そして厨房に行き、翌日の仕込みをしてるしずかに、オーナーとやりあってしまったと話した。
「私の役目はこの店を一流にすることでした。しかしオーナーは一流にならなくてもいいとおっしゃった」
「うちのオーナーは何も考えてないでしゃべってんだから」と、しずかは真に受けないよう言い、自分の料理の味見を千石にさせた。
「素晴らしい」
しずかは千石に言った。
「あのノーテンキなオーナーの味方をするつもりじゃないけど、彼は人の良さでは超一流じゃない。他のみんなだって、団結することにかけたら一流でしょう。そういった意味じゃ、このお店ってとっくに一流じゃない? 私は好きだよ、この店」
千石は押し黙り、何かを考えていた。
「……すみません、昔のことを思い出してたもので」
彼は前オーナーシェフのことを思い出していた。
「彼は自分の思い通りにならない人間をどんどんクビにしていった。それを戒めるのは私一人でした。そして、結局私も辞めるはめに。店を去る時、私は彼に言いました。たとえ、一流と呼ばれている店でも、あなたに人を思う心の優しさがない限り、このレストランは三流以下だって。……ずっと忘れていたこと、今思い出しました」
千石はしずかに苦笑して見せ、
「今の私は、あの時の彼だ」と悲しい顔をした。
しずかはたまらなくなり、片付けをしないで帰っていった。

翌朝、出勤した和田は店内が完璧に片付いていることに驚いた。
厨房に入ったしずかも昨夜の後片付けが済まされ、隅々まできれいにされていることに驚いた。
こうして伝説のギャルソンの千石は店を去った。

禄郎は自分のせいだと責めた。
「この店に嫌気が差したんだ……」
「違うと思う。あの人は自分に嫌気が差したんだと思う」としずかは言った。
従業員たちは集まり、今後どうするのかと禄郎に聞いた。
「千石さんがいなきゃ店は開けられない」と範朝。
すると梶原が、「店は開けましょう」と言った。
「千石がいなくても、わたしがいます。食堂支配人はこの梶原です」
従業員たちも覚悟を決めた。
「あの男がいなくても、俺たちだけで立派にやれること証明してみせよう。それが千石さんに対する恩返しじゃないかな」
禄郎も覚悟を決めた。
「開店の準備を!」

感想とシナリオ分析

禄郎は、たしかにベル・エキップを一流のフレンチレストランにするため、千石を引き入れた。
千石はその約束を果たそうと努力を重ねた。
そして彼が先頭に立って、店を引っ張ってきた。
かつて自信のなかったシェフのしずかは、自信と経験をつけ、一流シェフになった。
その彼女に触発され、店は勢いづき、いい方向へと変わっていった。

一方で、千石は『一流』というものに固執しすぎて、視界が狭くなっていった。
一流の店にするには、こうしなければいけない。
一流の店になるには、一流のプロをいれなければいけない。
だんだんと従業員を、一流か否かで判断するようになっていった。

それは彼が最も嫌った前オーナーシェフの姿だった。
自分を誘ったオーナーの禄郎に、千石の考える一流を目指すなら、一流にならなくてもいいと拒絶された。
一流同士、良き理解者と思っていたしずかにも、あなたはこの店がすでに一流だと気づかないのかと目が覚めることを言われた。

彼は孤立し、そして気づいた。
「ベル・エキップ」最大の危機は、自分自身なのだと。
そして千石は黙って店を去った。

従業員たちは覚悟を決め、千石のいないベル・エキップの新たな第一歩を踏み出した。
一流のフレンチレストランはもう目の前。
最終話、ベル・エキップはどうなるのか、楽しみです。

素晴らしかったセリフ

オーナーの禄郎とやりあった千石。
一流になんかならなくてもいいと言われ、店を一流にするために頑張ってきた彼の心は折れかけた。
それをシェフのしずかに話した。すると彼女が、
「一流のシェフから言わせてもらうと、一流だって色々あると思うのね。料理が一流とか、店の造りが一流とか」

「働いてる人間が一流ってのもあるんじゃないの? 腕が、じゃなくて、人間が。ここにいるみんな頑張ってると思うよ」