サスペンス

「古畑任三郎」第1シリーズ 第2話 ネタバレ感想 | 1994年・春ドラマ

古畑任三郎

『犯人側から描くのがいいのは、人間を描くことが出来たこと』
と、脚本の三谷幸喜さんはそう語ってます。
まさに古畑の面白さは、ミステリーよりも人間ドラマだなと思います。
そして犯人が毎回、特徴のある職業で、その人ならではの犯行をするのが楽しかった。
考える方は大変苦労されただろうと思いますが・・

「古畑任三郎」第1シリーズ、第2話『動く死体』の感想と脚本を分析していきます。

「古畑任三郎」は、FODでご覧いただけます。



登場人物

古畑任三郎――田村正和
警視庁刑事部捜査一課の刑事。階級は警部補。
得意料理は、ミートローフと茶碗蒸し。

今泉慎太郎――西村雅彦
警視庁刑事部捜査一課の刑事。階級は巡査。古畑の部下。

中村右近――堺正章
歌舞伎役者。

野崎――きたろう
警備員。

第2話『動く死体』アバンタイトル

「新しい機械を買ったときには必ず説明書を読んでください、少なくとも3回。箱から出す前とセットした後と、寝る前に。一晩置くのがポイントです。気を付けなければならないのは、外国製の機械で……」

第2話『動く死体』あらすじ(ネタバレあり)

『義経千本桜』で『狐忠信』を演じるため、鏡の前で化粧をする歌舞伎役者・中村右近。
右近の楽屋にやって来て、険しい顔した警備員の野崎が膨らみのある封筒を差し出す。
「お返しします」
中には口止め料が入っていた。
「これ以上は耐えられんのです……。これから警察へ行って洗いざらい……」
「わたしは悪くないよ。婆さんが悪い」と右近は意に介さない。
どうやら右近はひき逃げ事件を起こし、その事実を隠そうとしている。野崎はその車に同乗して事件を目撃、今まで黙っていたが耐えられない。

「六代目! そろそろ支度を」と楽屋にスタッフが呼びに来た。
右近は軽い返事をする。
その後ろで、野崎が鼻から血を流して絶命していた。
野崎の青白い顔に、右近は手ぬぐいを放って隠した。

出番へ向かう右近。すっぽんという昇降装置に乗り、舞台へ上がる。
拍手喝采。『狐忠信』を演じる右近。
その間、彼は偽装工作について考えていた。

右近は舞台を降りた後、化粧を落として服に着替え、劇場を後にする。
そしてコンビニで買い物をし、再び劇場に戻ってきた。
あらかじめ、人目を避けて出入りできるよう裏口の窓の鍵を開けている。そこから侵入して楽屋に入った。
暗がりの廊下。関係者は誰もいない。
それを確認して、野崎の死体を運ぶ右近。
すっぽんに野崎を乗せると、奈落から舞台へ。
右近は舞台上の天井を見上げ、野崎がすのこからの転落死したように偽装した。
それから楽屋へ戻り、コンビニで買った白米とお茶漬けを用意し、それをかきこむ。

やがて警察が到着した。鑑識が入り、現場検証を始める。
お茶漬けを食べて劇場を後にしようとした右近。捜査に来ていた古畑とばったり出会ってしまう。
野崎が死んだことを聞く右近。驚いてみせ、死因を尋ねる。
「直接の死因は、後頭部の打撲、詳しいことは明日になってみないとわからないんですけど……」と答える古畑。
すかさず右近は、「どこから落ちたの?」と訊く。
一瞬の間があった後、古畑は舞台の天井のすのこから落ちたと説明。
事故か、と立ち去ろうとする右近を呼び止め、古畑は現場へ連れて行く。

古畑は疑問を口にする。野崎は天井のすのこへ上り、何をやっていたのか?
右近は、天井に野良猫が住み着いていて、芝居の最中に鳴くから、猫を探してたのではないかと答える。
「そうなると、辻褄が合わなくなってくるんです」と古畑。
今泉をすのこに上がらせ、何かないかと確認する。
何もないと今泉が言うと、古畑は考え込んでしまう。
「もし野崎さんが猫を探しに上がったんだとしたら、絶対持ってなければならない物が、見当たらないんです」
「……」
「懐中電灯」
死体発見時、明かりは消えていた。なぜ懐中電灯を持っていかなかったのか?
顔を曇らせる右近。

さらに、古畑は右近をすっぽんが下がっている奈落(舞台下)へ連れて行く。
すっぽんの操作盤の前で話し込む刑事たち。
右近は落ち着かない。
第一発見者の舞台監督が、事件前はすっぽんが下がっていたのに、事件後は上がっていたと指摘。
「これは殺しですよ……」と、舞台監督は右近に耳打ちする。
右近は「まさか」と取り合わず、それよりすっぽんの調子が悪い、後で見ておいてと指示する。

すっぽんはドイツ製と古畑に説明し、使い方も簡単だと教える。
野崎も使えるから、すっぽんで舞台へ行き、猫を捕まえようとしたから、すっぽんが上がっていたのではと右近が言うと、古畑はまた考え出す。
「猫が逃げちゃうでしょ。いきなり床から顔が出てきたら」
「……」
「誰かが(すっぽんを)動かしたんですよ」

右近は帰ろうするが、気になって実際のところどうなのかと古畑に問う。
古畑は、「殺しです」とあっさり答えた。さらに、
「犯人の目星もついてるんです」
「誰? あたし?」
「(ぷっと笑う)それは置いといて……」と、壊れた腕時計を見せる。野崎の遺留品だ。
時計は止まっている。死亡推定時刻と思わせる安易な偽装工作だと指摘。
検死官によると、野崎は公演前には死んでいたのではないかという。
右近のアリバイを尋ねると、「あたしじゃないよ」と何度も否定する。
そこへ今泉が駆け込んでくる。古畑に報告し、これから何かを始めるようだ。

不安な右近は思わず、古畑に何の話かと訊く。
「懐中電灯です」
どこを探してもないので、これからみんなでくまなく探すのだ。
「懐中電灯が見つかれば、本当の犯行現場ももしかすると……」
右近ははやる気持ちを抑えて、楽屋へ急いで向かう。

楽屋内を探し回る右近。
だが、懐中電灯はない。
すると、ノックが鳴る。
「!」
古畑がやって来た。

大した用事ではない。古畑はチケットを取ってほしいと頼む。
そして念のため、なぜ今夜は楽屋に戻ってきたのかと尋ねた。
右近は次の公演の台本を読んでたからと答える。
古畑が台本を確認したいというので、台本を棚に取りに行って振り返ると、古畑のすぐそばに懐中電灯が…!

右近は古畑に気づかれないよう懐中電灯を隠そうと苦闘し、おかきをぶちまける。
おかきを拾い、次の役は殺人犯という話に興味を持たせながら、古畑の目を盗んで、懐中電灯を拾い上げてズボンの後ろへしまおうとした。
ところが、懐中電灯の底面が緩んでいたため、乾電池が床へ落ちる。
「!……」
古畑は台本に興味を示していて振り返らない。「何か落ちました」
そこへ古畑宛に、電話が鳴る。
右近は急いで乾電池をおさめ、懐中電灯を台所の引き出しへしまう。
「発見されたそうです」
「?……」
「懐中電灯」
「どこにあったの……」
「奈落の脇の廊下に。あれ? わたしの懐中電灯、ここに置いてあったんですが……」
愕然とする右近。仕方なく、しまった懐中電灯を取り出して渡す。
「……。あの野郎……!」

古畑は、右近が犯人とわかっている。だが決め手がなかった。
そこへ舞台監督が現れる。
右近にすっぽんを直すように言われているが、壊れていない。
操作方法を教えてもらう古畑。上げるのは簡単だが、下げる時は少し手間がかかることがわかる。
古畑は、右近にいつ直すよう頼まれたかを聞き出し、何かに気づいた。

「中村右近はある決定的なミスを犯しました。彼はあたかもやったのは自分だという証拠をここに残していました。ヒントは、このすっぽんの仕組みにあります。なんだかお分かりになりますか? たぶんわからないでしょう。ま、考えてみてください。古畑任三郎でした」

そして、古畑が謎解きを語る。

感想とシナリオ分析

さすがに謎解きをここで記すことはできないので、本編は動画【FODプレミアム】
DVDで確認してください。

今回の『動く死体』は、たしかパイロット版(仮の第一話)として、田村正和さんを落とすために書かれたものと聞いた気がします。
脚本の三谷幸喜さんは初め、古畑任三郎を玉置浩二さんで考えていたようです。
しかし古畑のイメージを膨らませていくうち、田村さんしかいないと思うようになった。
ところが、田村さんが刑事ものに難色を示した。
そこで、「古畑は今までの刑事ドラマと違って、ピストルも持たないアクションシーンもない。論理的に事件を解決する刑事です」と説明し、この仮の一話の台本を読んでもらったら、「これなら演ってみたい」となったそうです。

仮の第一話とうかがえる場面が、今泉を呼ぶ古畑のシーンで確認できます。
「ちょっと君、今泉くんって言ったっけ?」
「はい。今泉慎太郎です!」
と、野崎が落ちたと思われる天井のすのこへ上らされる。
そして事件時のように真っ暗にされて悲鳴を上げる今泉、というコミックリリーフの使い方ができてます。

古畑が右近を追い詰めていく様子は、演じる方も楽しいと思います。
右近がサイコパス気味ではあるんですが、人間臭いところが見えていいんですよね。
人には誰しも、表と裏の顔がある。その顔をうまく使い分けている。

そんな彼を犯人とわかっていて、古畑が細かい仕掛けをしていくのが面白い。
見せ方もいいですね。
奈落へ連れていき、操作盤の前で話し込む刑事と古畑。
何を話しているのか気になって仕方がない右近。
古畑が近づくと、唐突に「あなた嘘をついていましたね」と深刻に言い放つ。
さらに「見た人がいる」と伝えると、右近は動揺を隠しきれない。
しかし、古畑が話しているのは事件のことではなかった。右近がテレビにそんなに出ていないと出会いの場面で語っていて、実は昨夜もテレビに出ていたと刑事から聞いた話をする。
右近がつい安堵感から「そんな話か」と胸を撫で下ろす様子を見て、ニヤリとする古畑。
他にも楽屋での懐中電灯のくだりは痛快でした。
古畑vs犯人をどうやったら面白く見せられるかをよく考えられていて、見ている方は飽きずに楽しめます。

素晴らしかったセリフ

古畑は右近と出会った時から犯人だとわかっていた。
楽屋に残らず、古畑と出会わなければ逃れられたかもしれない。
なぜ右近は殺害後すぐ帰らずに楽屋に残っていたのか、と古畑は尋ねた。
「茶漬けを食っていたんですよ」
来月やる役が、芸者を殺した後、お茶漬けを食べるから。
「どんな気持ちか味わってみたくてさ、なんたってこんなチャンス、そうあるもんじゃないから。役者の鑑でしょ」

「はい。でも、犯人としては最低です」

まずは無料でお試し!【FODプレミアム】