サスペンス

「古畑任三郎」第1シリーズ 第1話 ネタバレ感想 | 1994年・春ドラマ

古畑任三郎

2021年、残念ながら田村正和さんが逝去された。
生前、たくさんのドラマに出演された田村さん。彼のヒット作の一つに、古畑任三郎がある。
今でも大人気の作品だ。久しぶりに再放送され、未見の若者にも古畑はウケた。

ウケた理由は単純だ。
ミステリーとコメディの絶妙な融合。
伝説的なドラマ、刑事コロンボを踏襲した倒叙モノのミステリーと、喜劇作家・三谷幸喜が描くコメディがマッチしたからだ。

ストーリーラインは毎回同じ。
先に犯行を描き、視聴者は犯人がわかった上で、古畑がどうやって謎に気づき、真相にたどり着くのかを楽しむ。
古畑vs犯人というわかりやすい構図が視聴者にウケた。
プラス、三谷幸喜と田村正和が作り上げた古畑任三郎というキャラクターが魅力的で、それに翻弄される犯人が面白く、毎回視聴者を飽きさせなかった。

「古畑任三郎」第1シリーズ、第1話『死者からの伝言』の感想と脚本を分析していきます。

「古畑任三郎」は、FODでご覧いただけます。



登場人物

古畑任三郎――田村正和
警視庁刑事部捜査一課の刑事。階級は警部補。
得意料理は、ミートローフと茶碗蒸し。

今泉慎太郎――西村雅彦
警視庁刑事部捜査一課の刑事。階級は巡査。古畑の部下。

小石川ちなみ――中森明菜
少女コミック作家。

第1話『死者からの伝言』アバンタイトル

「犬を飼っている人に一言。名前を呼ぶ時は『ちゃん』を付けるのはやめてください。『ちゃん』を付けると犬は『ちゃん』までが自分の名前だと思い込んで、『ちゃん』を付けないと振り向かない場合があります。犬には……」

第1話『死者からの伝言』あらすじ(ネタバレあり)

夜、降りしきる雨の中、一台の車が通り過ぎる。
運転しているのは、小石川ちなみ。助手席には大型の犬が座っている。
彼女は3日前の出来事を思い出した。
編集長の畑野を別荘の地下室に閉じ込めて置き去りにし、殺害した。

山道で、故障した車を停めて、ボンネットの中を調べる男。ずぶ濡れだ。
向かってくるちなみの車に手を振って助けを求めるが、無視される。

ちなみは豪壮な洋館の前に車を止める。彼女の別荘だった。
ちなみと犬は、雨に打たれながら別荘へと入っていく。
床に濡れた犬の足跡がつく。
ちなみは着いて早々、地下室へ向かった。置き去りにした畑野を確認するためだった。
畑野は、物が散乱した床に倒れて死んでいた。

故障の原因がわからず、車内に戻る男。
助手席にいる黒ずくめの男は平然とした口調で言い放つ。
「たぶん、ガス欠だと思うよ。注意力ゼロだね、刑事として失格だよ」
と、二人が刑事であることがわかる。

黒ずくめの男は、古畑。注意力ゼロの男は、今泉という部下のようだ。
今泉は土砂降りの中、ガソリンスタンドを探しに向かった。
古畑は車内から、洋館の明かりがついたことに気づくと、警察手帳にメモを記し、その紙を置いて洋館へ向かう。

その頃、ちなみは警察に110番通報をしていた。
「1ヶ月ぶりに来てみたら、地下の金庫室で亡くなってるみたいなんです」
しかし警察は雨で土砂崩れがあり、すぐには向かえないという。
と、玄関のチャイムが鳴った。

向かうと、古畑に助けを求められる。
警察手帳を見せて、電話を借りたいと言った。
ちなみは彼を中へ入れる。

動物好きの古畑は、犬の万五郎に触れた。足が濡れている。
電話を終えて帰ろうする古畑を、ちなみは呼び止める。
そして地下の金庫室へ誘導した。

地下室は電気がなくて真っ暗だ。
古畑はライトを照らして、倒れている畑野を調べる。

額に、頭を打ったような、あるいは殴られたような傷。
左手には、少女マンガの原稿が握られている。
床に小さな金庫。その角に血がついている。
なぜか片方だけあるスリッパ。
古畑は険しい顔で考える。

畑野は死後3日が経過している。なんらかのアクシデントで地下室に閉じ込められ、出るに出られず、中の空気を使い果たして窒息死した事故と思われる。
二人の関係は、コミック作家と編集者。
ちなみは、親密な関係を否定するが、古畑は疑っている。

畑野は地下の金庫室で何をしていたのか。古い原稿を探してたのではないかという、ちなみ。
古畑「あなたは何しに行かれたんですか?」
ちなみ「?」
古畑「荷物もほどかず、地下室へ向かわれた」
と、鋭い観察力を発揮。
ちなみは、いるはずの畑野がおらず、以前も似たことがあったので地下室へ駆けつけたと嘘をつく。

古畑は真剣な表情に変わる。
「大変申し上げにくいのですが、これは殺人の可能性もあります」
「まさか!?」と苦笑するちなみ。
畑野の額に殴られた痕があった。床にあった小さな金庫で畑野を誰かが殴ったと推理。
「そんなことありえません」と、思わず口を滑らせるちなみ。
地下室を開けられるのは、自分か畑野だけだからという。
古畑は疑問の顔。
そしてふと、犬の万五郎に目を向けた。スリッパで遊んでいる。

畑野の荷物を調べる古畑。3日前の領収書を見つける。
ガソリンスタンドの領収書があるが、畑野は運転免許証を持ってない。
レストランに立ち寄り、カレーライスとカレー南蛮そばを頼んでいる。
間違いなく3日前に畑野は誰かと一緒にここを訪れていると確信。
「……」のちなみ。

古畑は、畑野の女性関係を尋ねると、かなり派手に遊んでいたと答えるちなみ。
畑野の手帳にも、女性との密会を示すような名前の頭文字が記されている。
M、N、Y、O……
「3日前、Oの女性と会ってます。いやちょっと待って、Oではなく、Cです!」
Cは、ちなみのCでもある。
ニヤッと笑う古畑。

「ダイイング・メッセージって聞いたことありますか?」
畑野はたくさんある原稿の中で、なぜこの一枚の原稿を掴んで死んだのか気になっている古畑。
裏は白紙。
ちなみから原稿にある場面のストーリーを聞くが判然としない。
畑野はもう片方の手で、ボールペンを握っていた。
「書くものがあったのに、どうして何も書き残さなかったのでしょうか?」

落雷で停電。ローソクの明かりで、小石川ちなみ作品の『カリマンタンの城』を読んで感動する古畑。
ちなみは大した作品ではないと謙遜していたが、才能がある女性だと思う。
古畑に作品を褒められて、ちなみは嬉しさのあまり、料理を振る舞おうとする。

外に出て、食料庫へ向かう。ついていく古畑。
食料庫には、卵がある。
ちなみ「卵スープでいいですか?」
古畑「平気ですか、卵……」
ちなみ「平気ですよ、さっきまで電気がきてたんですから」
彼女が別荘に訪れたのは1ヶ月前のはずでは?
古畑「……」

料理中、今泉がやってくる。ずぶ濡れだ。
古畑が車内に書き置きしたメモの文面に抗議する。
「向かいのお屋敷にいる。待ってるわハート」
車は、今泉の車。ガールフレンドも乗る。誤解を招くメモはやめてくれと訴えた。
そして濡れた足で歩き回り、注意する古畑。
床を見て、何か思いついた顔。

「今回のテーマはダイイング・メッセージ。やはり被害者はこの中(原稿)に犯人を示すメッセージを残していました。自分を殺したのが、小石川ちなみであることを示す、十分すぎるほどの手がかりがこの中にあったんです。この謎が解けた時、同時にもう一つの謎も解決されるはずです。すなわち、被害者を殴った人物は誰なのか。ヒントになったのは、これ(古畑が今泉に書き置きしたメモ)です。古畑任三郎でした」

そして、古畑が小石川ちなみに謎解きを語り出した。

感想とシナリオ分析

さすがに謎解きをここで記すことはできないので、本編は動画【FODプレミアム】
DVDで確認してください。

何度も見ていて、結末や謎解きがわかっていますがやはり面白いです。
三谷作品は、ワン・シチュエーションが多く、第一話目に長尺のほぼワン・シチュエーションをやるというのはすごいことだと改めて思いました。

しかも登場人物は、古畑vsちなみで、二人が言い争う場面もなければ、淡々と互いの手札で戦うという、感情の起伏が少ない話です。
若干コメディ要素は薄いですが、それでも飽きずに見入ってしまう。

第一話なので、ミステリーファンやコロンボ好きの視聴者を取り入るために、あえてミステリーに比重を置いて作ったのかなと思います。
犯人はわかっていますので、最大の謎を『ダイイング・メッセージ』に絞って展開し、ラストに明かす構成は、ダイイング・メッセージのアイデアが優れていないとやれません。

古畑が謎解きをするまで、とても丁寧でフェアに手がかりを描いています。
が、このダイイング・メッセージのアイデアは、なかなか気づくのが難しかったのではないでしょうか。
トリックなどのアイデアで、逆手に取る、というのはよくやりますが、三谷さんが考えた理由に、素直になるほど!と思わせた。
さらに、犯人も知らない、畑野の額の傷の意味を知った時、これもダイイング・メッセージかとわかる展開にはミステリー好きも唸ったはずです。

話や映像に派手さはなかったですが、小石川ちなみというキャラクターの儚さ、彼女と対峙する古畑のクレバーで紳士な態度が、上質なミステリーと相まって、大人な作品に仕上がっていました。
結果、老若男女に愛される作品となったと思います。

ちなみに第1話『死者からの伝言』は、刑事コロンボの『死者のメッセージ』から着想を得ているようです。

素晴らしかったセリフ

ちなみ「どうしてこんなことになっちゃったのかしら……。ハッピーエンドの話ばっかり書いてるのに、わたしの人生は何だって感じ……」
古畑「……」
ちなみ「でも、わたし後悔なんてしてませんから。わたしが悔しいのは、殺してしまったことじゃなくて、出会ったこと。あんな男のために、どうしてわたしの人生、棒に振らなくちゃいけないのかなって……」
古畑「おいくつですか?」
ちなみ「28です」
古畑「まだまだじゃないですか。第一巻目が終わったところですよ、『カリマンタン』で言えば」

「ハッピーエンドは最後の最後に取っておけばいいんです。あなたはいい奥さんになれる。保証します」

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