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「101回目のプロポーズ」第8話 ネタバレ感想 | 1991年・夏ドラマ

101回目のプロポーズ

前回、達郎と婚約した薫は、3年前に事故死した真壁とそっくりの藤井に出会ってしまった。
しかもその藤井は、達郎の直属の上司。
まだその関係について互いに知らないが、今後大きな火種となるのは間違いないでしょう。

達郎と薫を今まで応援していた視聴者は、藤井が悪者(敵)に見える。
しかし藤井の登場は、彼らにとって必然といえます。

達郎と薫は問題を抱えたままゴール(結婚)を目指しましたが、偽りの価値観や考えを持っている限り、真の幸せや満足を追求することはできません。
これから彼らは本当の意味で変わることが求められていきます。
それができるのか、否か。8話の感想と脚本を分析していきます。

「101回目のプロポーズ」は、FODでご覧いただけます。



登場人物

矢吹 薫 (30)――浅野温子
オーケストラのチェリスト。
結婚式当日に事故死した元婚約者を忘れられず、再び誰かを愛することを恐れていたのだが、達郎から命がけのプロポーズをされ婚約。
ところが元婚約者に瓜二つの藤井と出会い、再び心が揺れ動く…

星野 達郎(42)――武田鉄矢
建設管理会社の万年係長。
100回目のお見合いで恋をした薫に命がけのプロポーズをして受け入れられる。幸せの絶頂を迎えるのだが薫の様子がおかしく…

星野 純平(22)――江口洋介
達郎の弟。法学部の大学生。
両親亡き後、親代わりになって育ててくれた達郎を誰よりも心配し、応援する兄思いの一面がある。
涼子と両思いだと思っていたが、彼女は達郎のことが好きだったと聞き…

矢吹 千恵(20)――田中律子
薫の妹。純平と同じ大学に通い、サークルも同じ。
姉にプロポーズをして失敗した尚人に恋心を寄せる。だが尚人は振り向いてくれず…

沢村 尚人(28)――竹内力
オーケストラのバイオリニスト。
薫にプロポーズをしたが断られる…。その後、達郎と薫の婚約を知り、潔く負けを認めて二人の幸せを願うのだが…

石毛 桃子(34)――浅田美代子
薫の親友。楽器店を経営しながらピアノ教室も主宰。
薫と達郎の恋模様を操るキーパーソン。

岡村 涼子(23)――石田ゆり子
達郎と同じ会社の受付嬢。
純平とは合コンで出会い、彼の片思いに気づかないおっとり天然娘。
達郎が婚約したことを知り、彼が好きだったと純平に打ち明けた…

渋谷 悟 (25)――前田真之輔
達郎の直属部下で慕っている。

藤井 克巳(35)――長谷川初範
達郎の上司で課長。事故死した薫の元婚約者、真壁に顔も声も生き写し。
度重なる偶然で薫と出会ううち二人は…

藤井 美加(5) ――田中友香里
藤井の娘。薫のピアノ教室に通う。

第8話あらすじ(ネタバレあり)

藤井といた達郎が去った後、薫がピアノバーへやってきた。
彼らが親しそうに話をしていたところ、尚人が来て声をかける。
藤井はそこで去るのだが、書類を店に忘れる。
薫はそれを持って店を飛び出す。

そして再び店の前で話し込む薫と藤井。
互いに自己紹介をして別れる。
「さようなら、薫さん」と言われ、薫の目から涙がこぼれ落ちた。

後日、尚人は薫と藤井のことが気になっていた。
彼女は「似てたのよ」という言葉を残して去っていく……

何も知らない達郎はウキウキしながら結婚式の式場選びをしている。
ところが薫は黙って聞いているだけ。
上の空だったのだが、どんどん段取りを決めていく達郎に、
「そんなに急がなくても」と本音がぽろりとでた。
達郎も薫の気が変わるのでは……という不安を隠し、純平に急かされてつい焦ってしまったと詫びる。
そんな自信のない彼に薫は不満な顔を浮かべる。
薫はずっとこういう達郎の態度が気に入らないのだ。何度も変わってほしいと言っているのに……

そして二人で街中を歩いていると、突然薫が達郎を呼び止める。
薫「星野さん、私のこと好きですか?」
達郎「それはもちろん」
薫「だったら好きって言ってください。大きな声で私のことが好きって言って」
だが達郎は苦笑いを浮かべて躊躇する。周りに人がたくさんいるからだ。
薫はさらに彼を困らせる。
「キスして……」
達郎はほとほと困り果て、結局できなかった。
薫は「冗談」とごまかして去っていく。
何も知らずに安堵する達郎。
薫は振り返り、つぶやいた。
「あたしをドキドキさせて」
その声は達郎の耳に届かなかった。

達郎は純平に、薫の様子がおかしかった話をする。
だが純平は「余計なことを考えるな」と励ます。
弟の優しさが嬉しい達郎だった。

千恵が薫にどんな結婚生活になるのかと楽しそうに話す。
「お金はないけど、愛情はたくさんありそう」
という言葉に薫は少し引っかかる。
薫は達郎と一度もケンカしたことがないのだ。昔の恋人の真壁は違った、と。
「真壁さんと比べたらかわいそうだよ。本当に結婚する気あるの?」
という千恵の鋭い指摘に、苦笑いの薫だった。

コンサートが終わり、薫がホールを出ると小さな女の子が花束を差し出した。
藤井の娘・美加だった。
藤井も鑑賞していて、娘の誕生日を一緒に祝ってくれないかと誘う。
無邪気な美加を前に断れず、3人はタクシーでいく。
それを尚人が見てしまった……

その頃、達郎は意を決して婚約指輪を買ったところだった。
達郎は帰りのバスの中、それを眺めては嬉しそうだ。

レストランで藤井の娘の誕生日を祝う薫。
美加がピアノを習いたいと言い、藤井親子は薫にどんどん接近していく。
それを察したのか、藤井は「誤解しないでください」という。
「いつもこんな強引な誘い方をするわけじゃないんです。なんとなくもう一度会いたくて」
薫は動揺を隠せない。

尚人が達郎の会社にやってきた。
受付にいた涼子は尚人を覚えていた。なんだか嬉しそうだ。
そして尚人は達郎に、薫が他の男と会っていると告げる。
達郎は信じたくない。
しかしその男が、薫の忘れられない真壁に似ていると聞き、達郎の顔色が変わる。
「デタラメだ、そんな話は!」と怒鳴った。
達郎が声を上げて怒ったのは初めてのことだった。
「薫さんはそんな女じゃない」
「そんな女じゃないけど、薫も女ですよ」と去っていく尚人。

さっそく藤井の娘が薫のピアノ教室に通う。
そしてお迎えに来た藤井を見て、桃子は驚いた。
薫が来て、睨みつける桃子。
さらに、日曜、娘と動物園へ行くから一緒に行かないかと藤井に誘われる。
まんざらでもない薫の様子に桃子は不満顔。

彼は真壁じゃないと忠告する桃子。
だが薫の心はもう止められない。
「どうしようもなく惹かれるの。胸がドキドキする」と涙する薫だった。

その夜、達郎は薫をピアノバーへ誘った。
尚人が忠告に来たと伝え、自分はそれを信じないと話す。
だが顔は疑っている。

怒って帰る薫を追いかける達郎。
話したかったのはそのことではなく、婚約指輪ができたことだと必死に食い止める。
婚約指輪を出して、薫にはめようとするが、サイズが合わない。
それでも必死になって薫の指にはめようとする達郎。
そんな彼を見つめながら、薫は何も言葉をかけられない。彼の気持ちに応えなければ……と必死に言い聞かされているようだ。

そして薫の家の前で、尚人の忠告の真実について話すという。
「二度と同じことは聞かないでください」
そう言ってから薫は首を横に振った。
安堵する達郎。
その様子を見て、薫は笑顔で涙を流した。
彼女は達郎に嘘をついたのだ。それがお互いにとっていいことだと考えたから。

薫は藤井に電話をして、婚約していることを伝えた。
日曜の動物園の誘いも断った。

翌日、藤井と達郎が屋上でばったりと会う。
ピアノバーで会った女性に振られたと達郎に話す。
達郎はその女性が薫だと知らず、どうしようもない女ですね、と口走る。
相手は婚約しているらしいが、そんなのは男と女の間に関係ない、僕らが良ければそれで……という藤井に、達郎は苦笑いを浮かべるしかなかった。

その夜、薫の家に藤井の娘から電話がかかった。
達郎と会う約束をしていたが、慌てた様子で薫は藤井の家へ向かった。
美加が一人で高熱を出していた。
そして藤井が帰るまで、薫は待つことに……

達郎は薫の事情を千恵から聞いて納得する。
そして薫に見せるはずだった、サイズが直った婚約指輪を千恵に見せる。
満面の笑みの達郎。

藤井が家に帰ってきて、薫と話し込む。
「一つ聞いていいかな。婚約してるっていうのは本当か?」と藤井。
それに薫はうなずく。
「その人は君のこと愛してるのか?」
薫は二度三度うなずいた。ところが……
「君の方は?」と聞かれて薫は答えられない。
逃げるように帰ろうとする薫の手を掴んで引き止める藤井。
二人は見つめ合い、長い沈黙……
薫は抑えきれず、藤井の頬を両手で包む。
「あなたは似てるの。私がとっても好きだった人に。とっても好きだった人に。もう死んでいないはずのあの人……」
と、抱きつく薫。
そして二人は激しいキスを交わした。

感想とシナリオ分析

見応えのある回でした。
達郎と薫の問題と欠点が露呈し、そこをとことん追い詰める藤井の存在は最強です。

「達郎を愛しているのか?」という問いにどうしても薫は答えられません。
この回だけではありません、彼女はずっとです。
薫は元恋人の真壁との日々だけが、『愛』だと信じている。
だから彼と達郎を比べたり、もっと彼のようにドキドキさせて、という要求を繰り返す。
与えられることばかりを望むのは、『愛』ではないということに彼女は気づいていません。
それは愛ではなく、欲望です。
愛を履き違えているから、彼女は何度も過ちを繰り返し、元恋人が死んだあの時点へ引き戻されてしまう。

一方の達郎も、「薫を信じます」というのだが、ずっと疑っていますね。
彼も『愛』を履き違えています。
愛するとは相手を信じることではない。
愛することができれば疑うことさえしませんから。
その境地に彼はなれない。愛を、いや、そもそも女性を彼は疑っているから。

互いに願望だけを押し付け合い、ゴールを目指そうとするから本質にたどり着けない。
そこを藤井という存在がしつこくつき、揺さぶってくる。
このまま二人は藤井によって引き裂かれてしまうのでしょうか。
9話の展開が気になります。

素晴らしかったセリフ

一度は思いとどまった薫だったが、美加のSOSを断りきれずに藤井の家へ行った。
そして藤井に気持ちを見透かされ、ついに欲望の抑えがきかなくなり、薫は彼に抱きつくと、藤井とキスを交わした。

その裏で、達郎は人生のピークを迎えている。
それを言葉にしようとチェロに向かって独白する。

「今まで信号機通り生きてきました。信号を見て、赤だったら絶対渡りませんでした。青だったら、臆病だから、ビクビク渡ってました。でも薫さん見たら、車が来ても、誰が邪魔しても、薫さんに向かってまっすぐ歩けました。薫さん、心の色、青ですよね? 俺、信じてますから」

裏切られているとも知らずに……。切ないです。